6:大人の夏休み(以下略) まとめ(2)
夏休みの宿題の採点、その2です。先生はちゃんと採点してるんですよ!(笑)
そんなわけで、今回も参加作品につけたレビューを集めてみました。
☆真夏の夜の魔物/伊藤マサユキさん
壊れたクーラーで初夏を過ごすという、熱い日には読みたくない話でした(笑)
はたから見れば、一つ連絡すれば万事解決するような事も、本人にとってみれば大事なんですよね。億劫だったり、忙しかったり。
☆余白/水円 岳さん
水円さんお得意の幽玄ものです。
現代のコンテンツビジネス(本を含む)は可処分時間を取り合うことで競合他社とシェアを争奪しています。
その可処分時間も安定した生活と平和な環境があってこそ生まれるものです。例えば仕事が忙しくなったり、家族が重い病気にかかるなど、小さなことでつまづいても自由な時間は失われます。それが戦争となれば…。
そしてコンテンツの消費は、実は贅沢なものなのであると、改めて思うことができる作品でした。
☆くぞちだかさ/目さん
姉弟が「くぞちだかさ」になってしまい、言葉が逆再生になってしまう話です。
権堂君ちのお母さんに会った時、くぞちだかさになったお姉さんが、無難に「ええ」だけ答えたところに笑ってしまいました。
話す言葉が逆再生になるなか、「いない」などの回文はまだしも、「そう」など逆になっても意味が通ってしまう言葉のややこしさ。創作の話なので笑っていられますけど、実際に逆になってしまったら、意思疎通がまったくできなくなってイライラするでしょうね、りつ子みたいに。
ちなみにこのレビューも逆から書こうとしましたが、最初の一文で諦めました(笑)
☆秘密と嘘/内田 薫さん
人生というのは演劇のようなもので、特に大人になると、いくつもの仮面を被りながら賢く今を生き抜く術を求められます。
本作の主人公のように、周囲の期待にこたえることで、コミュニティ内で有利な立場(それはしばしば人望などという言葉であらわされる)を得ていたとしても、実際は何でも引き受けてくれる便利な人間と思われているだけかもしれないし、甘い顔をしているとつけあがってくる人間がいるかもしれない。
それに気づいて、何もかもが面倒になり、投げ出してサボってみたくなる気持ち、よくわかります。
が、それでもコミュニティに属するには、善良な人間を演じなければならない。そんなジレンマを描いている作品です。
相変わらず目さんの小説は視点が独特でおもしろいです。
会話シーンで目の動きが→↓←と竜巻旋風脚のコマンドみたいになるので、読書体験としても独特な遊びがはいっています。
身につまされたのは「秘密と嘘」。私も会社で「いい人」を演じた結果、「便利な人」扱いされて潰れてしまった経験があります。便利な人になっているという自覚があってなおいい人を続けると、建前と本音の間で人格が分裂するような感覚を覚えます。秘密と嘘の中では義務をサボるという手段で解決していますが、大人になるとそうもいかないんですよね。残念ですけど。
なんか愚痴っぽくなってしまいましたね(汗
残る二作もそれぞれよいお話でした。
次の3回目で夏休みの宿題の採点はおしまいです。お楽しみに!
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