4:大人の夏休み(以下略) まとめ(1)
9/1です。みなさん、宿題は終わりましたか?
自主企画「大人の夏休み(の宿題)★読書感想文気分で原稿用紙10枚以内の文章を書こう」ですが、13作品の応募がありました(うち1つは私の作品ですが…)。ありがとうございます。
今回は全作品にしっかり目を通し、レビューを書いていこうと考えています。
そのうち四作品を読ませてもらったので、レビュー文を掲載します。
☆「「ね」が好きな女の子」/目さん
"幼稚園のとき「サンタクロースさま、どうか『ね』のつくプレゼントを下さい」と心の中でお願いしたのだが、枕元にあったのはお人形だった。それ以来、周囲に期待をしないで生きるようになった。"
で、吹きだしてしまいました。願望はなかなか周囲に伝わらないものですよね。
さて本作ですが、「ね」というキーワードがひたすら羅列されていくという不思議でナンセンスな話です。
ちなみに練馬区には練馬という町名があります。練馬区練馬です。引っ越し先に最適だと思いますので、どうぞご検討ください。
☆Afterword ~炊飯器の恋とイワシの頭~/甲乙 丙さん
この物語は、仮想の小説「炊飯器の恋とイワシの頭」のあとがきである。
多くのあとがきがそうであるように、物語のあらすじとファクターの分解に重きを置き、難解にしてナンセンスな本書の読解を試みている。
私は「炊飯器の恋とイワシの頭」を読んだことはないが、本あとがきから感じたことから、本書の読解に挑んでみようと思う。
まずは主人公。花柄のついた炊飯器という時代めいたモノだ。これは電気炊飯器が家庭における普遍的地位を獲得した70年代の特徴だ。当時は男性と女性の家庭的役割は分離され、台所仕事と言えば主婦の領分であった。花柄は、そのような奥様たちのお気に召すように施されたマーケティングの結果である(同じく当時の電気ポットも花柄模様が多かった)。この花柄が消された理由は、その後の男女雇用機会均等法の制定、そしてフェミニズムの躍進という事柄があったからだ。すなわち「男子も厨房に立て」というパラダイムシフトにより、炊飯器の花柄は消えていったのである(同時にこの運動は、亭主関白という言葉を死語へと追い落とした)。
このような時代背景を整理すると、他の登場人物である無機的なオブジェクトにも記号的意味が感じ取れる。ほつれ取れたカーディガンのボタンは裁縫をしなくなった女性の家庭的堕落を忌む男性のイメージであり、炊飯器と惰性的に肉体関係を続けるしゃもじは性的な堕落を意味する。
対して積み重ねられた夕刊は社会変革の象徴で、ウミネコから吐かれたオタマジャクシは幼児性からの脱却を意味するものであろう。
そして本作のヒロインである「頭の縁から飛び出た中骨が床を擦り、顔を顰めるイワシの頭」は高度消費社会となりつつある現社会への警告、もしくは皮肉ともとらえられる。
こう考えると、なぜカーディガンのボタンがイワシに恋い焦がれ、花柄の炊飯器の恋路を邪魔しようとしたのかが分かる。すなわちカーディガンは人間からの愛を求めているのだ。
花柄炊飯器が台所の主役であったころは、服がほつれたり、ボタンがとれかかっていれば裁縫道具を持ち出して修繕したものである。だがファストファッションが主流となった現在では、服飾品はその機能や外見が欠損すれば捨てられる運命にある。ボタンに人格があれば、「まだまだやれる」と言うかもしれない。だが人はボタンの気持ちなど分からない。ゆえにカーディガンのボタンは、捨てられたイワシの頭にシンパシーを感じ、それはやがて恋へと変わっていったのであろう。
もしかしたら花柄の炊飯器がイワシの頭に恋したのも、同様の心理が働いていたかもしれない。
すなわち「炊飯器の恋とイワシの頭」とは、消費社会への皮肉と、花柄家電があこがれであった時代へのノスタルジーを、無機的な登場人物たちにのせて描いた作品であろうと思われる。その難解な作品に的確なあとがきを添えた氏の思索に敬意を表したい。
☆ある生還劇/薪稲 吟太さん
心臓が止まって楽に死ねたというのに、現世への執着を持ってしまったが故に、苦しい死に方をしてしまった皮肉な男の話です。
子供の頃は死というものに強い恐怖を感じていました。特に火葬は狭い箱に閉じ込められたあげく、燃やされるというトラウマ級の怖さです。死ぬだけでも恐いのに、さらに燃やされてしまうなんて…。そんな原初的恐怖を体現しています。
☆銀うさぎ/梔子さん
誰かにとっての幸せは、誰かにとっての不幸かもしれない。
幸せを追いかけているうちに視野狭窄に陥り、周囲に迷惑をかけてしまう。そんな独善的な太助をいさめる銀うさぎ。しかし太助は耳をかしません。その結果、大きな不幸を迎えることになります。
そして幸せは誰かの犠牲の上にあってはならない。そう思える話でした。
”Afterword ~炊飯器の恋とイワシの頭~”の感想が長いですが、本作と関係ないところで勝手に膨らまして書いた感想…というより論文です。難しいこと書いてますが、このレビューに中身はありません(笑)。というか人様のレビュー欄でふざけてすいません(汗)。
「ね」の話は前回の企画で「節目」を送ってくれた目さんの作品。相変わらず面白い着眼点で、「ね」というテーマに強く固執した物語です。
もうちょっとちゃんとしたレビューを書こうと思ったのですが、いい意味でつかみどころがなくて、どう書いていいのか悩んだあげくごらんの有様(レビュー)です。
面白い作品なので、私のレビューは別として、一読をお勧めします。
今のところ以上です。後日、残りの作品のレビューを掲載します。
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