私のオークさま
多田七究
第一話 勇者の旅立ち
「
「こっちの杖は?」
「2以上だけど、もとの
「右手と左手に持てばいいだろ」
「さすが
モンスターがはびこる世界。平原の
その群れに、次々と雷が降り注いでいく。あっという間に
ついでに、通りすがりのオークに命中。
「あっ。制御無理、これ」
「オークだから、大丈夫」
少年は、手に光の
誰かの声を聞いた。
誰なのか分からない。
自分が何をしていたのか、何をしようとしていたのか。
自分が何者なのかも、分からなくなっている。
「雷で、上着が焼けてしまったのですね」
「オークだから、ダイジョウブ」
記憶の
ブタのような顔の
「無理しないでください。村で手当てします」
細身の少女は、オークを軽々と片手で持ち上げた。村に着くまで休憩もせず、
「ついてないな。
「いや。生きているから、ついていると言える」
「お。気が付いたようだぜ」
「大丈夫か? あんた」
「オークだから、ダイジョウブ」
「そうか。名前はオークというのか」
「ん? 様子が変だぜ」
彼には記憶がなかった。
ブタのような顔に傷はない。
建物に誰かが入ってくる。ビスチェ風のブラウス姿。
オークは、細身の少女と再会した。
「よかった。気が付いたのですね」
「ミウナ、先生は?」
「すぐ戻ってくるはずです」
十代半ばの少女は、オークを見て嬉しそうな表情をした。
首をかしげるオーク。
「悪いね。その顔は治せなかった」
髪の長い女性がやってきた。
「先生。こいつ、記憶がないんじゃないか?」
「わたしの
「マイった?」
オークが口を開いた。
「やめとけ。先生はお前に脈ないぜ」
「なんだ? ゾンビと戦っているのかい?」
「そう言える。ナウラー先生、脈が――」
その言葉を最後まで聞くことはできなかった。
「そんなわけないでしょ!」
突然口を開いた、おさげのミウナ。鋭いツッコミを入れた。
開いている入り口から、外まで吹き飛ばされた男性。かろうじて息をしている。
「ついていたな。ここが
「ああ。生きているから、ついていると言える。いたた」
「おれもそう思う。もう大丈夫だぜ」
去っていく三人の男性。おさげの少女は、頭を下げている。
「ほんの少し、加減してほしいものだね」
「ごめんなさい。難しいです。加減」
医者の女性に言われ、ミウナは落ち込んでいた。
「ダイジョウブ」
「ありがとう。私、ミウナ。わかる? ミウナ」
「ミウナ? オレ、オーク」
「すごいじゃないか。才能ってやつかね」
医者のナウラーは少女を褒めて、大笑いした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます