今日もウチのねこは外ばかり見てる

霜山 綾

ねこはどこからかやってきた

第1話 ねこは外ばかり見ている

七月三日。11月14日。ウチにねこが召喚された。

くもり。前任のいぬがいなくなってはや三年。悲しみは癒えたが、寂しさは残ったまま。早く起きたので、河原の芝生広場を歩いていた。

そのあと、もうすぐもみじ祭りの準備をしていた公園に初めて立ち寄った。

字のうまい昔の人がたくさん祀られている。

岩を削って作られた、穴が祠の代わり。

穴ごとに一人ずつ、佇んでいる。

人混みに紛れて、足元を歩くねこ。

忙しそうなおばさんに蹟かれたり。

追い払われたり。

道の真ん中に寝そべってる。

撫でて欲しいの?

何も声もあげない。

しっぽの先だけが二、三度はねた。

しばらくすると目の前でねそべる。

それだけ。

誰のねこ?

誰も知らない。

三日くらい前からいるよ。

迷子かな?

近くに民家はないよ。知ってるだろ。

ここが山の中だってこと。

しっぽの先が揺れる。

持っていったらいいよ。

何も言わずめを細めている。

お祭りの準備の邪魔だから。

たぶん、縁起がいいねこだよ。きっと。

しっぽを振ってノビをする。

その一言が。決め手。


ネコは外ばかり見ている。




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