第百七十四話◆死闘
「……待たせたわね!」後ろから
好矢はふらっと倒れたが、後ろから沙羅に抱きかかえられ、そのまま地面に座らされる。
そのまま好矢は後ろを見たが、沙羅のコールブランドに力を与えた四人は倒れて戦闘不能状態に陥っていた。
……文字通り全ての力をコールブランドに託したのだろう。世界の命運を沙羅に懸けたのだ。
「思い出すわね……中学時代の好矢くんがチンピラに喧嘩でボコボコにされて、アタシが竹刀でチンピラを返り討ちにしたの……」
「えっ……?」
「その時の好矢くんも血まみれだったからね……アタシはその時は珍しく本気でキレた」
「何の話をしているんだ、貴様は……?」ルインが不思議そうな顔をしていた。
「アンタの名前……ルイン・ディナスだっけ?……アタシはアンタを許さないから!」
「ふっ……怒っているのか?」ルインが杖を構えると、沙羅は続ける。
「別に怒ってないわ……激怒しているのよ!!」そういうと強烈な光を携えたコールブランドの残像を残しながら沙羅は姿を消し、一瞬で距離を詰めルインに斬り掛かる!
甲高い金属音が鳴って、コールブランドの斬撃を抑えたのはルインが持っていた杖だ。……あの杖は何らかの金属製だったようだ。
ただ硬度からしてミスリル以上の金属なのは間違いない。
「はぁぁぁっ!」沙羅が得意とする高速の剣捌きで的確に攻撃をしていくが、ルインはそれについて行くようにガードしていく!
ルインも予想以上の沙羅の実力に焦っているようで、冷や汗を掻きながらガードしていく。そのまま斬られると再生云々の話ではない。破壊魔法が発動されてしまう。
破壊魔法が発動されると、何が起こるか見当も付かない。
何故なら自身を倒すために作られた五大魔器であることは知っている。だが倒されたことはない。
つまり、五大魔器の破壊魔法の効果を知らないのだ。もちろん、そういったものがある……という話は知っている。
「ちぃっ!発動!」衝撃魔法で吹き飛ばそうと発動させると、沙羅はその衝撃魔法を回避して、横や後ろから斬り掛かろうとしてくる。
ルインは初めて自分の身に危険を感じ始めてきた。
「このままで済むと思うな!発動!」沙羅の周りに円形に火炎を発生させ、一時離脱をする。だが、コールブランドの刀身がその火炎に触れると、一瞬で火炎は掻き消え、再び高速で肉薄してきた。
「チッ!しつこい女だ!発動!魔法伝導発動!!」
ルインは改めて魔法を二つ発動する。
沙羅の足元の草を盛り上がらせ、
「うっ……!?」沙羅は驚き、その場を離脱しようとするが、とてつもない重力で思うように上手く動けない。
躓いて転びかけた時に重力の圧力が襲ってきたため、その場で倒れてしまう沙羅。
「ふ、ふふ……どうやら重力は上手くいったようだ!発動!」そう言うとルインは好矢、ロサリオ、ガリファリアを戦闘不能に追いやった氷の槍を飛ばしてきた!
キィィィン!!と甲高い音が鳴って、ギリギリのところでコールブランドを持ち上げられ氷の槍をガード出来たのだが、その衝撃により、手からコールブランドは弾かれてしまった!
「しまっ――!!」
「終わりだ……サラ・キャリヤー!!はつ―」「発動ッ!」ルインは手を沙羅に向けていたが、その手が吹き飛んだ!
ソフィナがフラフラになりながらも立ち上がって、風魔法で作った真空の刃をルインに飛ばし、手だけ切り飛ばしたのだ!
「チッ!……発動!……やはりゴミは先に処分すべきだったな……!!……魔法伝導発動!!」ルインは切断された手を再生させると、ボロボロのソフィナへ強力な衝撃魔法で吹き飛ばす!
「うぅっ……!!」ソフィナは再び吹き飛ばして、再びドームの壁へ激突し意識を失った。
「いつ復活されてもおかしくないな……バラバラにしてやる!!」ソフィナへ手を向けると……「発動!」と聞こえ今度は別方向からルインへ攻撃が飛んできた!
鋼鉄のような硬さのガゾの葉で右肩を貫いたのだ。ボロボロの好矢の手から魔法の発動痕が見えた。
ルインはわなわなと震える……
「ゴミムシ共が……!!寄ってたかって邪魔しか出来ない……全員殺してやる……!!まずは貴様だ!トール・ヨシュアァッ!!」
ルインは一撃で仕留める為に右手に魔力を圧縮して集中させ、ゆっくりと好矢に歩み寄る。
(不味い!早く立ち直ってルインに攻撃しないと、好矢くんが死んでしまう……!)ゆっくりと、少しずつコールブランドに手を伸ばす沙羅。
(もう少し……!もう少し……!)拾ったらコールブランドを杖代わりに何とか立ち上がって……!
「サラ・キャリヤーは俺の闇魔法でもう動けない……トール・ヨシュア……まず貴様から なぶり殺しにしてやる……!魔法伝導発動ッ!!」
ルインはそう言うと、魔力を圧縮させた右手で好矢を衝撃魔法で吹き飛ばして、壁に激突させる。
「がはッ……!!」
「ふははははは!!もっと
好矢自身、気を失いそうになると衝撃魔法で吹き飛ばされ、痛みで気を失えない。もう強烈な痛みが永久に続くような感覚に陥っていた。
一方その光景を見ながら何とかコールブランドを拾える位置にまで来れた。
(早く助けなきゃ…!何とか……届いた!!)コールブランドを掴むサラ。
だが次の瞬間――
…バチンッ!!
「えっ――」
・
・
・
――ドームの外。
同じ頃、ドームの外で倒れていたシルビオ学長は意識を取り戻した。
「ここは……トーミヨか……?」
「意識を取り戻しましたね、シルビオ学長」アウロラが睨んでいる。
「キミは確か……卒業生の……」
「何を今さら!」
「さあ!早くトールたちを外へ出すんだ!!」ガブリエルがシルビオ学長に怒鳴りつけながら黒いドームを指差す。
ドームは外からも中の状態が分からない上、作られたのと同時に邪悪なる者が外へ出た為その一瞬を目にしなかった彼らは、邪悪なる者の本体が中にいて、シルビオ学長が既に正常に戻っていることなど分からなかった。
「!!」気を取り戻したシルビオはドームに近付いて、ドンドンと叩く。
「どうやってこんなものを……!」
「お前が作ったんだろうが邪悪なる者め!!」今度はオルテガが怒鳴りつける。
「……はっ!!」シルビオ学長はその時、全てを思い出したような表情を見せると、ガブリエルやアウロラたちに土下座し始めた。
「ほ、本当に申し訳ないことをした……!!だが、俺の中に邪悪なる者は今はもういない!このドームの中にヨシュアくん達と共にいるはずだ!」
「なッ……じゃあ、邪悪なる者を退治しなければアイツらは外へは出られないってのか……!?」ガブリエルはそう呟くとシルビオ学長は首を横に振った。
「いや……邪悪なる者に操られていた時に見た術式だと……中からの破壊も難しいようだ」
「そんな……!」アウロラは放心していた……。
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