第十七話◆第二回戦・Aチーム vs Cチーム
模擬戦開始から、3時間が経過した。
既に敗北しているのは、D、E、F、Hチームで、これから始まるのが、AチームとCチームの第二回戦。
Cチームは全員女性で構成は、雷属性を得意とするエリシア・アーネット、無属性を得意とするエレナ・ローズ、金属属性を得意とするノーマ・レイクスの三人だ。
模擬戦とは関係のないことだが、リーダーのエリシアはソフィナに負けず劣らずの美女だ。
金髪の髪に、少しタレ目気味で泣きぼくろがある。しかし気が強そうというギャップを感じる顔をしていた。
「植物属性を得意になるなんて、ヨシュアくん、かわいそうね。」エリシアはそう言う。
実際、植物属性を得意とする学生は落ちこぼれが多い。
しかし、それには理由がある。実戦で役立てる為には、植物の名前や生態を魔導語で勉強しておく必要があるからだ。
魔導語で勉強することに時間が掛かり、実際の魔法の練習をする時間が他の学生よりも足りなくなってしまう。結果、魔力が足らなくて、大した魔法が使えなくなってしまう。
しかし、当然ながら好矢は違う。この世界では魔導語はほぼ完璧。魔力も申し分ない……というか高すぎる。
「かわいそうなのはお前だ、エリシア。大した魔力も持ってないで…。」好矢はハッキリとそう言った。
しかし、エリシアは決して低い魔力ではない。好矢が現れるまでは、二学年次で二番目の魔力を誇っていた。その数値は402。
ソフィナには圧倒的に負けてはいるものの、お互いはライバルだった。
司会の声が響く……「ええと…喧嘩は試合の後にしてもらってもいいかな?」
「すまん。」好矢は一言謝っておいた。しかしエリシアは、好矢が持つ恐ろしい魔力の事を知らないので、怒りが勝ってしまい、そんな余裕はなかった。
「ぶっ飛ばしてやる!!」エリシアの顔だけ怖い。ピキッた時の学長ほどの怖さはないが。
「二学年次模擬戦・第二試合、始め!!」司会の声が響くのと同時に、ズバァァン!!と大きな雷魔法を好矢に当ててきた。
Aチームのゲージが一気に三割削れる。
もちろん、放ったのはエリシアだ。始めの合図が来る前に、頭の中で魔法のイメージを固めておき、合図と同時に魔法を撃ったようだ。
合図の前に魔法攻撃を撃つことは禁止されているが、詠唱は禁止されていないので、ルールには引っ掛からない。
しかし、頭に血が上っていた状態で、それをやってのけるのは、やはり優秀な学生の証でもある。
「私の事甘く見すぎたんじゃない?」エリシアは笑う。それに対し…
「…今のが本気か?」好矢は鼻で笑う。
好矢はそのままソフィナとアデラに言う。
「二人共、この三人は俺一人で片付ける。そこで防御してろ。」
「バカじゃないの!?エリシアは貴方が思っているほど甘い相手じゃないよ!!」アデラが言う。
「そうだぞ、好矢くん。我々も戦う。」ソフィナもそれに続く。
「分かった。でも、俺がやろうとしてることは、一撃で奴を仕留める大技だ。」それを言って好矢はCチームの学生達が集まる地面を見る。
(詠唱待ちの木……六本……Cチームを囲め…魔力120使用。)「発動!!」
バァン!と、ただの木がCチームを囲むように六本生やした。ただ、生やすだけで120も使った訳ではない。
(蔦を根元から伸ばせ…!!)「発動!」
先に詠唱待ちの木を生やしておき、魔力を消費せずに蔦を伸ばしていく。その蔦は、木と木を結び、△と▽を重ねた形を作り、中心にCチームを固定した。
……そう。六芒星の形である。
「何をするつもり!?エレナ!無属性魔法で木を消して!!」
「今詠唱中!黙ってて!!」
異常な状況にCチームは混乱しているようだ。そこへ――
(中程度の雷魔法への効果を付与……黎明の天罰……魔力200使用。)「発動!!」
この時点では、特に何も起きていない。
「ソフィナ!あそこへ適当な強さの雷魔法を撃て!」そう言って好矢が指差した上空には、光る粒のようなものがあった。
「えっ?……う、うん……。」
(かみなり……あの粒へ落ちる……)「発動!!」
光る粒は更に輝きを増し、ピカッと光った。それと同時に……
バァァァァンッッ!!!!
超巨大な雷が真っ直ぐCチームへ落ちていく。
「!?」ソフィナはかなり驚いていた。消費魔力20程度で雷を落としただけだからだ。
三学年以上の学生達がザワついた。二学年次の後期に習うものだが、多くの者が出来ないまま進級していく技術を使っていたからだ。
魔法バフ――術者が魔法の起点を作り、そこへ同じ属性の魔法を当てることで、普段よりも大きい威力の魔法を放つ事ができる。
使用するには、詠唱で使用する魔導語を全て上級魔導語である漢字で詠唱し、更に形状のイメージは文章ではなく名前を付けて行わなければ発動しない。
つまり、魔法に名前を付ける必要が、魔法バフで初めて出てくるのだ。
…というものを教科書に書いてあったのを試しただけだ。
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