夏の歩

ふと前に目をやれば

行き交う車の切れ間切れ間に 君の姿が

待ち合わせの五分前

信号変わった暑さの下で

僕ら 互いに近づいていく


夏の色した横断歩道の真ん中で

君に何を語ろうか

だけど きっと 僕は真ん中通り過ぎ

君より一歩 夏の中


夕立の淡い匂いが見え隠れ

さながら町の騒めきも 自然とスピード増していく

歩き始めて三十分

空の様子気にするフリして

君の仕草に目をとめる


夏の風来たこの道で

君の笑顔に触れようか

その時 雨が 先に見つめる頬を伝い

僕の勇気が 優しく濡れた


宵の明かりが灯り出し

その日の終わりを 逃すまいと人繰り出す

さようならの十分前

最寄駅の改札で

あてもなく口実を探す


夏が後引くこの夜に

僕の弱さを打ち明けようか

かすかに 君が 頷いたなら

二人はすでに 夏の中


夏の色した横断歩道の真ん中で

君に何を語ろうか

だけど きっと 僕は真ん中通り過ぎ

君より一歩 夏の中

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る