双子の魔術師と仮面の盗賊
curono
おぼろげな世界 はじまり
「神無き時代
混沌ありき 光と闇の
神なる力 全てを統べる
手に入れしもの 創神となる
世界はそこで
命あるもの すべて消えて」
*****
「大荷物を持って、旅行ですかな」
急に声をかけられて、少年はふり向いた。後ろにいたのは、大きな
少年に話しかけたのは、そんな老木だった。
しかし、少年はそれに驚くこともなくニッコリと笑って答えた。
「旅行じゃないんです。これから学校に行くんです」
そう言って荷物をよいしょ、と足元に置く少年は、まるで水のようにきれいな青い髪をしていた。
「学校……はて、このあたりに学校はなかったと思うがのう」
言いながら、老木のおじいさんの顔のような部分の下から、木が曲がる。どうやらそこが首らしい。おじいさんの動きに合わせ、顔のような部分の上に伸びる枝からようやく生え始めた春の新緑がサワサワと鳴った。
そんな様子を眺め、少年は春の訪れを感じながらほほえんだ。何と言っても、少年にとって待ちわびた春なのだ。
「ここらへんじゃないんです。遠くの南にある、セイランってとこの学校なんです」
少年が答えると、老木のおじいさんはその細い目を初めて開いた。緑色の優しそうな目が驚いたように見えた。
「ほう、あの魔術学校として有名なセイラン魔術学校か……。おまいさん、やるのう」
おじいさんのほめ言葉に、少年は嬉しそうに笑った。
「本当は去年行くはずだったけど、遅くなっちゃって……。ようやく今年いけるんです」
その言葉に、老木が
「そうかそうか、それでは待ち遠しかったのう。あそこはみんなの憧れじゃ。しっかり学んでくるのじゃぞ」
「はい! じゃあ、僕、行きます」
老人にそう言って一礼すると、青い髪の少年はまた荷物を持ち直し、やる気に満ちた表情で歩きだした。
少年の進む先には、広い原っぱが見えた。その原っぱの中心に
「あれが飛行船か……」
ポツリつぶやく少年の顔には、一瞬不安そうな色が浮かんだ。しかしそれは本当に一瞬だった。
「セイランの町、か……。――よぉし!」
息を吸い、決意を込めるようにそう言うと、少年は迷いなく原っぱの中へずんずんと進んでいった。
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