№248

 もうすぐ一人暮らしをするので、引っ越しの準備をしていました。ずっと実家暮らしだったんで、昔のノートなんかはもう捨てようと整理していたら、友達からの手紙が入ったお菓子の缶が出てきました。

 小学生の時、可愛い折り紙やメモを折って、お手紙交換がクラスで流行っていたんです。内容は放課後遊ぼうとか、一緒に下校しようとか、誕生日会のおしらせとか。可愛かったんで大切に置いてたんですよね。

 懐かしさから手を止めて眺めていたら、ちょっと分厚い手紙が出てきたんです。他のは手のひらに乗るくらいのサイズに凝った折り方をしているのに対し、それはA4サイズの紙で何か包んでるようでした。止めていたセロテープは劣化して茶色くなっていました。

 もらった記憶はあったんですが、誰だっけ? と開くと黒いマジックで

『お守りだよ 大切にしてね』

 とA4の内側に書いてあり、綺麗な千代紙を折って作った長方形のお守りが出てきました。手紙の最後に書いてあった名前はうっすら記憶がある程度の小学校の時の友達です。卒業式の日に突然渡され、私が何か言う前に走って行ってしまったんです。当時は「なんで私? 渡す相手を間違えた?」と不思議でした。その子と仲が良い子も知らなかったし。直接渡して間違えるなんてことはないだろうし、本当は友達になりたかったけど言い出せない位シャイだったんだなと自己解決してたんです。

 子供ですから、千代紙を使ってお守りっぽい何かを作ったんだろうと思っていたんですが、久しぶりにそれを触ると何か手触りがおかしい。中にゴワゴワした何かが入ってる感じで。そのお守りは糊で留めてあったんですが、それも経年劣化か開き掛けていました。私はちょっと好奇心で開けてみたんです。

 中には土台になる厚紙と、毛と爪が入っていました。厚紙には私の名前が書いてありました。毛と爪はたぶん動物の物です。

 さすがに気持ち悪かったです。そのまま捨てた方が良いのか、それとも虫がわいたら・・・・・・それまで何も無かったんだから今更虫が付くわけないんですが、知っちゃったら何か汚くて、つい庭で燃やしちゃったんですよ。

 後日、当時のクラスメイトで幼なじみの友達から連絡があって、そのお守りの子が死んだから葬式に行こうって。びっくりして「なんで?」って聞いたら、燃えたって。料理してたらコンロの火が服に引火して焼死したって。しかも私がお守りを燃やした日に。

 ま、偶然かもしれないんですけどね。あれが呪いみたいな嫌がらせでも、私は何も効果無かったし。今更呪い返しみたいなことになったとしたら、結構かわいそうですよね。

 嫌われた理由? 心当たりあるとしたら、当時は私、めっちゃモテてたんで、好きな子が私のこと好きだったとか?

――今は全然ですよ、と牧さんは照れくさそうに笑った。

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