№132
私が良久と出会ったのは高校の入学式の時でした。お互いにびっくりしました。なぜなら私たちは他人とは思えないくらい似ていたからです。クラスメイトたちも「双子?」と聞いてくるくらいです。でも私には兄しかいませんし、彼女にも弟がいるだけだと言いました。クラスメイトたちは「リアルロッテ」だの何だの盛り上がりましたが、私は同じ顔がいるなんて気持ち悪くてしょうがありませんでした。良久も私を見るとき不快そうな目をしていました。一応両親に確認しましたが私に双子の姉妹はいないし、私が養子だということも絶対無いと戸籍も見せてくれました。誕生日も違いましたし、本当に他人の空似だったんだと思います。ただ私たちはお互いに嫌悪感しかなくて、関わらないように高校生活を過ごしました。クラスメイトたちも最初は面白がったものの、すぐに関心は移り変わっていきました。ちなみに見分けは最後まで付かなかったみたいです。私服の学校だったので服の嗜好で判断していたそうです。結局私たちはわかり合うことなく卒業しました。そして卒業して3年目の今年、新年会も兼ねて同窓会をしました。結構参加率は高かったと思います。私は年末バイトで帰省できず、年が明けてから地元に戻りました。それなのに何人かの友達から「年末にどこそこにいたよね」みたいなことを聞かれました。もちろん否定しましたが、絶対私だったと皆主張するので、きっと良久だろうと私が言うと、ふとその場が静かになりました。そして「ひょっとして知らないの?」と一人が良久のことを教えてくれました。卒業後、彼女は病気で亡くなったそうです。それが卒業してから1年もたたずに亡くなったとか。健康そうに見えたんですけどね。そういうわけだから、皆年末に私を見たと思ったそうです。でも私は絶対帰ってきていませんし、結局私に何かしらの事情があるのだろうと、気を使うような空気になってその話は終わりました。私だけ、もう一人私たちに似ている人がいると言うことかと、嫌な気持ちになって帰路についたのですが、その途中私も見てしまいました。良久が道の向かいから歩いてきたんです。あれは確かに良久でした。高校の時のように私を不快な表情でちらっと見て、通り過ぎていきました。すぐ振り返ったんですが煙のように消えていました。若くして亡くなってきっと思い残すことがあったとは思いますが、それが何なのか、そして全く仲良くなかった私の前に何故現れたのか。彼女のことを何一つ知らない私には分かりません。
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