№32
自分の名前をインターネットで検索したことありますか? まぁ、大抵は姓名判断のサイトが引っ掛かっかるか、本当に自分か、まれに同姓同名の違う人が出てきたりしますね。一度やってみてください。けっこうドキドキしますよ。
僕の彼女は検索しなくてもそれができる人でした。出会いも「君、ひょっとして遭難した親族いる?」でした。確かに僕の従弟は以前雪山で遭難してニュースになりました。一命はとりとめましたがなかなか見つからなかったので実名報道されていました。珍しい名前ではないのですが、なんとなくピンときたそうです。その他にも「あの人はあの大事故にあった人だ」とか、「あの人とこの前の事件の被害者、血縁かも」とかいうと大抵当たっていました。事件とか事故とか死人が出る話なのでなかなか本人に確認することはできないのですが、やっぱり気になってインターネットで調べたり、それとなく周りに聞いてしまって、それで彼女の言うことがあってるって知るんです。
彼女は普段は普通の女の子でした。占い師でも、犯罪や事件を調べまくっているオタクでもありません。それに会う人会う人全員にそんなこと言うわけでもありません。でも彼女が言う思い付きのようなその言葉が、徐々に怖くなっていきました。
それで、僕は彼女の正体を調べようとインターネットで名前を検索しました。本人に聞くことができず、友達にも「彼女が怖い」なんて馬鹿なこと相談できるわけもなかったので、そんな方法を取りました。今思えば、なんでそんなことをしたのか……。
彼女の名前は写真付きで掲載されていました。それは十数年前に通り魔に殺された女性でした。名前も顔も出身地も彼女と一致していました。殺された年齢も当時の彼女と同じでした。
僕はやってはいけないことをしてしまった。彼女とはそれから会えてません。共通の友人に聞いても突然消えたと動揺していました。住んでた家は更地になっていました。何度か泊まっていたんですけどね。携帯電話も全然知らない人が出るし、メールも届かない。僕が知ってしまったから彼女は消えてしまったんです、きっと。
――三田さんは言葉を詰まらせ、涙を流していた。
もう一度会いたいんです。
――私にはその後ろで悲しそうな顔で彼を見下ろしている女が見えた。
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