Twitter300字ss あまりの蝶
割り算の筆算を習ったとき、「あまり」を横に書かねばならないのが憂鬱だった。近からず遠からずの距離はいかにものけ者の様相で、私は自分が仲間はずれにされたかのように、ぽつんと佇む数字を憐れみ、少年サッカーチームに171個のみかんを差し入れる大人の愚かさを憎んだ。
その後、分数を習うと余りは存在ごと消えた。現実は教科書とは違って、牛乳もおかずも誰かのお腹の中に収まり、余りは出ない。
あの寂しい「あまり」はどこへ行ってしまったんだろう。無限に続く円周率の数字はどこに折りたたまれている? 不思議は積もる一方だ。
数はとりどりの色。無限小数の野に「あまり」の蝶が飛び交うさまを夢想する春、私は数学科の学生になった。
(300字)
「Twitter300字ss」企画参加作品/お題「余り」
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