Twitter300字ss ボンボン・ショコラの夜

 彼の服を脱がすのは、とびきりおいしいチョコレートの包み紙を剥がすのに似ている。味わっているとき無口になるのも、無口に気づいてにやけてしまうのも同じ。ふたりだけの、とっておきのご褒美。

 違いといえば、チョコレートは食べたらそれきりだけど、恋人は何度でも味わえることと、二十八度で溶けないことか。ただし、体温では溶ける。


「なに考えてんの」

「いいこと」

「めっちゃ悪い顔してるけど」


 このチョコレートは口答えするのだ、かわいいウィスキーボンボンめ。でも、からだの細胞に染み渡る夜は、アルコールなんかよりよほど効く。

 そういえば、胞の字は肉を包むと書く。包み包まれて、三十六度のテンパリングはいつだって最高の出来だ。



(300字)


「Twitter300字ss」企画参加作品/お題「包む」

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