Twitter300字ss 最初の授業は

 教室の扉は閉まっていた。


 何てことのない幻覚魔法だ。扉に噛ませた砥石も足下の魔方陣も常道で、捻りがない。まとめて解除する。

 さて次は教室である。良からぬ魔法の気配がひしめいて、なるほどやる気は満々か。意気込みは買うが、稚拙が過ぎる。

 教室内の魔法を引っぺがし、術式の目的語を反転。悲鳴と絶叫が爆発し、新入生たちが血相を変えて走り去った。


 教室に残ったのは一人だけだった。彼女はこちらを見て頬を染め、目に星を浮かべる。

 これがあるから、新学期のつまらん応酬も悪くないと思えるのだ。


「あたしも先生みたいな魔法使いになれますか」


 わたしの教え子になるんだから、当然じゃないか。


「励みなさい」


 その輝きをずっと忘れずに。



(299文字)

「Twitter300字ss」企画参加作品/お題「新しい」

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