あまぶんポスカ企画 夢のあしあと
小説家は考えた。
この道をずっと行って、旅をしたいなあ。森を抜けて山を越えて、
どこまでも。
すると小説家は、立派な四肢と太い尾を持つ狼になった。狼は森を訪れ、
山の頂に至り、空を見上げた。
狼は思った。
この空を自由に飛び回りたいなあ。雲の手触りは、虹の味は、どんな
なんだろう。
すると狼は、立派な翼と鋭い嘴を持つ鷲になった。鷲は雲を貫き、
虹を浴びて海に至り、輝く波を見つめた。
鷲は思った。
この海を泳いで、世界の端に行ってみたいなあ。海の底は、波の色は、
どんななんだろう。
すると鷲は、立派な尾鰭と美しい声を持つ鯨になった。鯨は海の底の
暗闇に触れ、世界の果てを夢見た。
小説家はペンを手に、終わらぬ物語を記してゆく。
(300文字)
第一回尼崎文学だらけ用ポストカード作品
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