300字小説倉庫
凪野基
Twitter300字ss 写真館にて
写真館って初めて。似合わぬ貸衣装に身を包んだ娘はそばかすの散る頬をぎこちなく持ち上げた。
「なァに、大したことはございません。いちにのさん、で素敵なお写真の出来上がりです」
「でも、写真を撮ると魂を取られるって……」
「まさか。さ、おかけ下さい」
撮影技師はちょいと笑ってみせた。ですよね、と娘も口許を緩める。
「何デタラメ吹いてんの。写真てそもそも魂を焼き付ける技術やんか。まさかも何も、実際うちらは魂ちょびっともろてんのに」
「し、聞こえる」
「はい、何か?」
いいえ、何も。技師はシャッターを切り、フィルムを取り上げて現像する。艶やかにして上品な、深窓の美女が印画紙で笑む。
さて、見合いの行方は如何に。
(300文字)
「Twitter300字ss」企画参加作品/お題「写真」
作者注:「うちらは魂ちょびっともろてんのに」=「私たちは魂を少しもらっているのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます