そっとおやすみ

ツヨシ

第1話

チャイムが鳴ったので玄関を開けると、お隣の近藤さんだった。


「あら、どうかしましたか」


「いや、特に用と言うわけではないのですが、なにかお困りのことでもあれば、言っていてだければと思いまして……」


なんだか妙に歯切れが悪い。


顔を見ると、私よりも近藤さんのほうが困っているように感じられる。


「いえ、今のところなにもありませんから。なにかありましたら言いますので、その時はよろしくお願いします」


「そうですか」


近藤さんは帰って行った。


――なんなのかしら?


居間に戻ってどれほども経たないうちに、再びチャイムが鳴った。


「はあい」


出るとご近所の大谷さんだった。


「どうしました」


「いや別に、特になにと言うわけではないのですが、様子を伺いに来たというかなんと言うか……」


ものの言い方も内容も、近藤さんとほぼ同じだった。


いったいどうしたと言うのだろう。


私も同じように答えた。


「特に何もないですよ。なにかあったら、その時に言いますから」


「でも、女手一つでは、なにかと大変でしょう。お子さんも小さいですし」


――女手一つ? この人はいったいなにを言っているのかしら?

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