Tonitoros Kingdom → Ignis Kingdom

ムルは、タクトを使うことをやめた方がいいかもしれません。じゃないと、。」

俺はソヌスの言っていることが理解できず、言葉を失ってしまった。死ぬって、そんな大げさな……。俺はこんなふうに軽くみてしまう。しかし、当の本人はそうではなかった。

ソヌス、どういうこと?」

ムルの表情が真剣な顔つきに変わった。

「わたくしたち印を持つ者たちは、ほかの人たちと違って生きるためにが必要なんです。」

「印って、もしかして私の右頬にあるあざのこと?」

「そうです。魔力が少なくなると、さっきのようにめまいが起こったり疲れやすくなったりといろいろな症状が出てきます。場合によっては、変身を解除されてしまうこともあります。そのあとに無理して魔力を使ってしまったり、再度変身をしてしまったりなどすると、場合によっては命を落としてしまうこともあるんです……。」

俺はその話に言葉を失ってしまった。それって、俺らにとって一番重要な話だし、俺らの大きな弱点でもあるじゃないか。ソヌスは話を続けていく。

「特にタクトを使うと、魔力の消耗が激しくなります。ムルの様子を見ていて、もともと蓄えることができる魔力が少ないのではないかと思いました。」

「どうして?」

「水の力は、武器が剣になるのでもともと魔力の消費量はそれほど多くありません。拳銃や弓の方がよっぽど魔力が必要になります。銃弾や矢は魔力を使って作っているので……。」

俺はその話を聞いてルーチェの方を向いた。ルーチェは頷きながらソヌスの話を聞いている。もしかして、ルーチェは知っていたのか……。

「つまり、ムルはそこまで魔力を消費していないはずなのにめまいが起こるほど魔力を消費しているから、もともとの魔力が少ないって考えたわけね。」

ルーチェソヌスの話をまとめてくれた。俺はここで話を聞いている間に浮かんだ疑問をソヌスに聞いてみた。

「ほかに俺らの弱点とかあるのか?」

俺はソヌスに話しかけた。体に変に力が入ってきて、俺は一度ゴクリと喉をならす。

ですかね……。全身に痛みが走って体が動かなくなる上に、大きな傷を負うほど傷付けられるとそれで変身が解除されてしまいます。」

その言葉を聞いた瞬間、みんなの空気が固まった。そして俺は順番に仲間のことを見ていく。ムルは右頬、俺は右手首、ウィントは首、オスカーは左手の甲、ルーチェは額に印がある。こんなに攻撃しやすいところに弱点があるなんて知らなかった。今まで攻撃が当たらなかったのが奇跡みたいだ。もしかしたら、無意識に自分で護っていたのかもしれないが……。

「とにかく、ムルはタクトを使うのは禁止です。」

「分かったよ、ソヌス……。」

そう言ってムルはゆっくりと立ち上がった。隣にいた俺がムルを支える。

「じゃあ、とりあえずゆっくり休みながらイグニス王国へ向かいましょうか。」

ルーチェの言葉を聞いて、みんなが頷く。俺が心配になってムルの方を見ると、ムルはそれに気づいたみたいで俺の方を向いてきた。俺と目が合うと、ムルは弱々しい笑顔を俺に向けた。


 オレがアジトにしている城に戻ると、フォンセに話しかけられた。

「どうだったの?ムルたちは……。」

「いやぁ、見事にやられたよ。あいつら、オレたちが入手していたこととは違った攻撃をしてきたんだから……。」

「どういうこと?フリケティブ。」

「あいつら、魔法のようなものを使ってきたんだ。細い棒を使ってね……。」

「細い棒?何それ。」

「確かあいつらはタクトって呼んでいたかな……?凄まじい力だった。」

「タクト……、知らないな。」

そんなことを話していたらフロッシブが会話に入ってきた。

「それ、見たことあるかも。エードラム王国でボクもその魔法にやられたもん。」

するとフォンセの表情が曇った。

「それって全員が使っていたの?」

「いや、全員ではなかった。風と雷と水の力。でも、そのときに初めて使うような感じがあいつらからしていたな……。」

「ボクのときは音の力。その子は使い慣れているように感じた。」

「音の力?聞いたことないな、その力……。でも2人の話だと、火の力を使うピュールと、光の力を使うルーチェはそのタクトってやつを使えないみたいってことでいいのかな?」

「そうだね。っていうことは、次狙っていくのは……」

ピュールルーチェで決まりだね。」



〔3月18日差し替え〕

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