第187話 剣士祭Ⅲ③
「やっとここまで来たな」
ロックがクスイーに声を掛ける。クスイーにとっては初めての剣士祭本選であるとともに、アイリス=シュタインを襲わせたランドルフ道場を公の場で叩きのめすチャンスだった。
「ありがとうございます。僕一人ではどうしようもなかったと思います。ロックさんたちのお陰です」
「まあ、みんなのお陰だな。でも今日は頑張らないと」
「はい。精一杯やってみます」
「ランドルフ姓の奴らは後ろの方だぜ、そのまま次鋒で行くのか?」
マコトが言うが今から順番は変えられない。
「そうなんだ。じぁあ俺の先鋒も変えられないか」
「変えたかったのか?」
「大将の方が格好いいじゃないか」
「出番があんまりないんたぞ?」
「強い奴とはやりたいが強すぎる奴とはまだやりたくないんだよ、負けるのは悔しいからな」
マコトはマコトの思いがあるのだろう。
「さあ、始まるよ、マコト」
「剣士祭本選第三試合、ローカス道場対ランドルフ道場を始める」
審判が宣言する。
「ローカス道場マコト=シンドウ対ランドルフ道場パーレ=メロディ、始め!」
マコトの試合が始まった。パーレと言う先鋒には見覚えがあった。確かランドルフ道場に行ったときに居たはずだ。
試合が始まって直ぐにパーレは仕留めに来た。時間を掛ける気が無いのだ。確かに今の実力ではマコトでは勝てないかもしれない。
パーレはランドルフ道場でロマノフ=ランドルフにこき使われる下っ端の様に見えたが実力は相当なものだ。予選で戦った相手の大将クラスと比べても遜色ない。
先鋒でこれだ。ランドルフ道場が本選でも上位になるのも頷ける。
「ロック、これはちょっと大変かも」
「ワクワクするじゃないか。マコト、無理しないでいいぞ」
ランドルフ道場はこれだけの実力があるにも関わらず裏で色々と画策しているのだ。
パーレは実力あるし卑怯なこともやらない、真っ当な剣士だった。もしかしたら、その所為で下っ端扱いされているのかもしれない。
「そこまで、パーレ=メロディの勝ち」
試合はパーレの勝ちで終わったがマコトは相当粘った。直ぐに終わらせる心算のパーレからすると見込み外れだった。
「ごめん、勝てなかった」
マコトが悔しそうに戻って来た。自分よりも強い奴が多すぎる。いつかマゼランで一番になってやる、と心の中で誓うマコトだった。
次に次鋒戦が始まる。クスイーの相手はランドルフ姓を持つ者ではない。
第四試合に出て来るルトア道場の関係者も出てきた。アイリスの顔も見える。クスイーのことを心配そうに見ているようだ。
「クスイー=ローカス、気合入れて行けよ」
アクシズが活を入れる。
「はい!頑張ってきます」
アイリスが居ることを視線の端で確認してクススーが中央へと進み出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます