第4章 厄災の街

第24話 港町ロス①

 ロスにはほどなく無事に着けた。今までの

旅が波乱万丈だったので、全く何事も起こら

なかったことで拍子抜けすらしている一行だ

った。


「海が見える!」


 レイラは初めて見る海に興奮していた。大

陸東部の大海は北のノーム海、東のエローム

海、そして港町ロスが面しているサミア海の

3つの海に面している。その中でもでもサミア海

は南に位置しているので、とても温暖で穏や

かな海だった。但し、南方特有の大嵐が時々

やって来る、気まぐれな海でもあった。


「このサミア海ってルスカ湖よりも大きいん

でしょう?」


「当たり前だろ、ここは海だよ。ルスカ湖は

シャロン公国で一番大きい湖だけど海に敵う

わけないじゃないか。」


 ロックがあきれ顔で答えた。


「だって海を見るの、初めてなんだもの。ロ

ックは何回も見ているから感動がないのよ。」


「確かに俺はロスには何回も来ているけど、

他の海は見たことないな。ルーク、一緒にい

ろんな海を見に行こう。」


「そうだね。というか、いろんな海があるの

?」


「あるさ。北にはノーム海、中原にはエロー

ム海、そして南にはこのサミア海。もっと北

やもっと南、ずっと東にも海は広がっている

というからな。」


「壮大だね。ロック、うんうん、いつか全部

制覇しよう。」


 一行が港町ロスの入り口ではしゃいている

と黒装束の場所の一行とすれ違った。その一

行は葬列のようだった。馬車の葬列が何両も

連なっている。大勢の人が無くなったようだ

った。


「何かあったのかな。」


「ちょっと聞いてくるよ。」


 ロックが葬列を見送っている人の中の一人

に話しかけている。そして、すぐに戻って来

た。


「何か、病気が流行っていて大勢の人が死ん

でいるらしい。ロスの街には入らない方がい

いと止められた。」


「そうなんだ、大変そうだけど、どうする?

ここまで来て、また来た道を戻るの?」


「どうしたものかなぁ。このまま戻るっての

も現実的じゃないしなぁ。馬も俺たちも体を

休めたいのは間違いない。」


「そうだね、じゃあとりあえず宿を探そう。」


 一行は町中に入っていったが、どうも街中

がどんよりとした空気で満たされていた。ロ

ックの記憶とはまるで違う。別の街に来てし

まったかのようだった。


 宿を見つけると早速聞いてみた。


「おやじさん、この街はどうしてしまったん

だい?なんだか街中が沈んているみたいだけ

ど。」


「旅の方、悪いことは言わない、すぐにこの

街を出た方がいいよ。」


「街の入り口でも、ロスには入らない方がい

いって言われたけど、一旦全体どうしてしま

ったんだ?」


「悪い流行り病だよ、先週から街中の人々が

バタバタと倒れてね。もう年寄りや子供は全

居なくなってしまった。若いもんも体力があ

るから大丈夫とか言ってたが、みんな病で倒

れてしまった。この街に元気な人間なんて一

人も居ないのさ。」


「そんなに。原因はなんなんだ?」


「そんなことわしに判る筈がない。医者は最

初にみんな死んでしまって、もう誰も病気を

診る者が居ないんだよ。」


「大変だ、州兵たちはどうしてるんだ?港湾

局も居るだろうに。」


「みんな死んでしまったさ。ロスは半分は死

んだ。アドニスに連絡に行った者も帰ってこ

ない。多分途中で死んでしまったんだ。」


「まずいな、これは街に入ったことが間違い

だったみたいだ。」


 後悔するロックとルークだったが、レイラ

たちを無事にラースに返す責任がある。状況

を確認したうえで明日にでも街を出ることに

した一行だった。


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