おおつごもり

 大晦の日、海鮮まみれの晩ご飯を食べ終えたころ、某音楽番組がはじまった。いそいそと冷蔵庫からアルコール飲料を取り出し、籠に放り込んでいく。持ち上げれば腕にずっしりくる重さ。日付が変わるまで飲み続けると思えばこんなものだろう。北海シマエビの素揚げと、あと、リンゴも。よし完璧だ。ご近所宅へ出発した。

 うちを含めて三軒と、遠方からいらっしゃるお客様たち数名での集まりがここ数年の恒例となっている。

 雪を踏みしめながら歩く。決して転ばないように、慎重に。玄関に靴を並べてリビングに顔を出すと、皆さまもうおそろいであった。

「座れ、座れ」と席を用意され、何でも食べれと勧めてくる。けれど私たちは食事をすませてから来たし、なんなら蕎麦ももう食べた。ただ一緒にいるために来ただけで、ごちそうにあずかるためではないのだ。寿司にすき焼き、オードブルが並ぶ食卓にエビの素揚げを加えると喜ばれた。

 まずは一本目。あれやこれやと話していると、ご近所の親子がやってきた。お父さんと、三姉妹の末っ子。彼女の前歯は一本抜け落ちており、残る一本もぐらぐらと不安定だ。歯が生え替わったからもう大人だと言いながら、差し出されたアイスクリームを頬張っていた。

 最後までいるかと思っていたのだが、どうやら家族に何も言わずに来たらしい。心配されている心配はないと言いつつ、しばらくすると帰っていった。初詣で会うので、また、あとで。


 まったく同じところで買った生蕎麦がでてきたので、ゆでるところを手伝って、食べるのはやはり遠慮する。おいしいおいしいと食べているのを見ながら、お酒を飲んでいた。

 赤とか白とかやめればいいのに、なんて言ってるあいだに年明けの時は近づいていた。そそくさと上着をはおり、帽子をかぶる。手袋もあったほうがいいだろう。露出する肌面積は小さければ小さいほどいい。除夜の鐘の音が時折聞こえてくる。

 初詣に向かうため、また雪の上に足をおろした。

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