リアルでぼっちだった俺でも、異世界なら童貞卒業できるって本当ですか?

星崎梓

ぷろろーぐ 前編・妄想してたら死んじゃった


※18禁ではありませんが、ヒロイン達と“えっちなこと”をするシーンが多数登場します。



 剣と魔法の世界にも、えっちなお店は存在しているらしい。

 俺のいきつけ店“桃色ドラゴン”では、こんなコースがある。




 【冒険者コース】

 【魔王と勇者コース】

 【騎士団コース】

 【恋人コース】

 【痴漢コース】




 どのコースも、客がシチュエーションを指定できる。

 で、お互いに役割を演じながら“えっちなこと”を楽しむんだ。

 たとえば「冒険者コース」なら、凄腕の冒険者が人型の魔物を押し倒すとか、逆に冒険者が魔物に襲われてえっちなことになるとか。

 部屋のセットも魔王城風だったり、草原フィールド風だったり、こだわっている。

 オーク×エルフみたいな陵辱ゲーにありそうな展開も、このコースに含まれるんだ。


 しかも、異世界だからね。

 本物の触手やスライム娘との、モンスター感あふれるえっちも出来ちゃうんだ。




「エルフや女騎士で、よくえっちな妄想をしています!」

「触手やケモミミ系の薄い本が好きだーーーーーーーーーーーー!」

「幼女×大剣は正義!」

「ロリババアに癒やされたいよぉ……ああ、ちっぱいぱいチュパチュパァァァーーーーーッ!!」




 こんな性癖の人にはうってつけのコース――だと思うよね?


 けど、問題が一つあるんだ。

 それは、働いているのは女の子ではなく、男であるということ。

 そう、俺は客ではなくサービスをする側なのだ。

 もちろんBLではない。相手は女の子なんだけど……。

 これがまたさ、厄介な女の子ばかりで。

 そもそも何故こうなったのかというと――。




                   ❤❤H❤❤





 恋人も友達もいないまま、俺は16年間生きてきた。ぼっちを極めた俺は、妄想力ばかりが発達していて、息をするように脳内を桃色に染めることが出来るようになっていた。

 妄想のシチュエーションは、たとえばこうだ。


 俺――トモマサは銀髪の似合う文武両道のイケメンで、お相手はピンクカラーのゆるふわウェーブがかわいい、クラスのアイドル。


 内容は次の通り。




「トリックオアトリート。お菓子くれなきゃイタズラするわ」


 なんて、すでに真っ赤なアイドル様が俺の家を訪ねるんだ。

 対して、俺はとっておきのカボチャプリンをご用意するわけ。



「今日のスイーツも美味しいっ♪」


 スプーンをくわえて、幸せそうに目を細めてくれる俺の天使。



「他にもかぼちゃ系のスイーツをいっぱい作ったからさ、一緒に食べようか?」


 テーブルいっぱいにケーキとか並べてさ。



「んもうっ、私を太らせる気?」

「君からはお菓子もらってないからね。俺なりのイタズラかな?」

「本当に太ったら、責任とってもらうんだからっ」


 ぷんぷんしながら食べる彼女が好きです。



 なんてね。

 あの日も、そーゆー妄想ばっかりしていたんだ。

 そうしたらさ、信号が赤になってるのに気付かなくて。早い話、トラックにはねられて死んだってわけ。

 で、



 ――目覚めなさい。




 な~んて、女の子の声が聞こえてきて。気がついたら、空も地面も真っ白な世界にいた。



「まるで異世界転生モノの主人公みたいなシチュだなぁ」


 起き上がって頬をつねると、痛いんだ。

 え、マジでそういうアレなの?

 驚いてきょろきょろしてみると、すぐ後ろにすっごい可愛い女の子が立っていた。


 水色の髪をまっすぐ腰まで伸ばした、小柄な女の子。

 着ているのは白いワンピースで、胸は成長途中です!って感じの控えめなB(と思いたい)で。

 まさに清楚系って感じ。舐めたくなっちゃうよね。



「気が付きましたか。私は女神フラン。死者の魂を次の世界へと渡らせる、おくりびとです」


 やや舌足らずな声で、美少女が言った。



「て、転生ってやつですか!」

「そうです。理解が早いですね」

「ええ、そりゃもう」


 漫画とかアニメとかゲームとかラノベとかで死ぬほど見たからね。本当に死ぬとは思わなかったけどね。

 女神様のお話を簡単にまとめると、生前悪い行いをせず、早くして亡くなった俺は、次の世界をある程度選べるらしいんだ。


 そんなのもう、最高すぎる。

 どんな世界を選ぶかって?


 決まってるよね。彼女がいなかったってことは、妄想を実現出来なかったってこと。つまり、えっちなことに対する未練だらけってことで。



「……がしたいです」

「なんですか? もう少し大きな声で言ってください」

「ファンタジーモノの薄い本とか、え、エロゲーみたいなことをしたいです」

「はっきり言ってください。どういうことをしたいんですか?」


 くうぅ。女神様なら心くらい読んでくれよ。


 えっちなお願いごとを口にするのって、すっげえ恥ずかしいんだけど。

 だからって、この夢は諦められない。

 えっちなゲームや薄い本も大好きだけど、だからってえっちぃことをしたくないわけじゃないからね。とはいえ、だよ。


 現実の女の子って、裏でナニ考えてるかわからないし。怖いよね。けど二次元の女の子なら、きっとみんな天使だ!

 転生して異世界に行っちゃえば、そこはもう二次元の中みたいなモンだよね?

 なので、勇気を出して、一気に言ってやった。




「エルフとか魔族っ娘とかとえっちなことが出来る世界へ行きたいです! 赤ちゃんに戻るの面倒なんで、年齢とか今のままで! あ、でもできれば見た目イケメンで、魔法とか剣術も強い感じになりたいです! 転生先は、平和で戦争とか化物とかも存在しない異世界! そこで、可愛くてえっちな彼女が欲しいです!」




「……煩悩まみれですね」


 女神様が呆れ顔になった。



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