えみ「この人なら、大丈夫……」
「いやはや、ホントに恐縮だよ~!」
丹湖門えみの自室に主の感嘆が響く。
ローテーブルに一枚の紙がある。咲人から送られてきた手紙の画像をプリントしたものだ。咲人からの挨拶に始まりアンビエントからのメッセージとその翻訳、体調に気を付けてという咲人からの言葉で締めくくられたものだ。
父の肉筆を懐かしく感じたが、それ以上にアンの言葉の衝撃が大きかった。
「なんか、凄く丁寧だよなぁ~」
咲人の翻訳を経ているからなのかもしれないが、えみを気遣ってくれていることや言い回しがとても丁寧に感じた。
「この響きは貴女がくれた宝物です、か」
アンの手紙の言葉を口にしてみる。なんだか古風なラブレターでも読んでいるような気分になった。
「美人は詩的なこと言ってもさまになるんだなー」
そんな独りごとを言いながら、えみは手紙を抱きしめる。
ただのコピーでも書いた人の温かさに触れられるように。
「うん。アンさんなら……この人なら、大丈夫……」
誰のことをいっているのか本人にも曖昧な想いが口から紡がれた。
けれど、きっと大丈夫だと、えみはそう思った。
「さて。じゃあ気合も入ったし、もうひと片付けしますかっ⁉」
えみは勢いよく立ち上がった。
現在彼女の住む部屋は酷く散らかっている。咲人の異世界生活のサポートに多くの時間と精神を費やした結果、その部屋は魔窟になりつつあったのだ。
持ち物が特別多いわけではないはずなのに、足の踏み場が日に日に消えている。
「なんか旭日とシノが近々来そうだしね~」
そう言ってとりあえず手紙を本棚に置くと、えみは部屋の片づけを再開した。
「……うっわ、なんでここからタオルが出てくるよ?」
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