湯上り蝸牛思考
「どーしたもんでしょうか……?」
風呂上り。丹湖門咲人はソファで自問していた。
問われているのは自身の行動で、何かについては今後のことだ。もうすっかり夜だ。あとは寝るくらい。
「…………」
ソファから立ち上がり、リビングをうろうろと咲人は歩き回る。たまに浴室方面が気になり足が止まる。
――なにをしているだ、私という奴は⁉
現在はアンが入浴中だ。二人の入浴の順番は必ず咲人が一人目と決まっている。彼女は熱い風呂が苦手なのでこのようになっている。
先刻の風呂に向かうときのアンのニヤケ顔が思い出された。
「いや、そこは良いんです、そこは」
ずいぶんと気恥ずかしい想いはしたが、アンの容姿に対するコンプレックスを少しでも解消できたのだ。そこはよしだ。
問題はこのままだとおそらく昨晩と同じようにアンと同じ部屋で寝ることになることだ。さすがに今日の流れからの同衾は心臓に悪い。
――頭のなかでえみとセイン君が悪魔の
脳裏にはアダルトグッズを送りつけてきた
「いくらなんでも、今日勢いに任せては、ない……」
咲人はそう考えている。ピュアなんて
だというのに、どうにも浴室に注意が向いてしまう。
――少し素直になってみたら、コレだ。
アンは美人だ。咲人はそう思っている。アンは可愛らしい。そう感じている。
とどのつまり、アンは咲人の好みのストライクど真ん中な女性なのだ。
「うう~ん……!」
それくらい自分でも分かっていた。アンと出会ってそう経たないうちに。そのため意図していままで避けていた話題だった。いざそれを口にしたら相手が想像以上に喜んでしまった。心音は咲人の思惑を無視して早鐘を打ち続けている。
「サキトー?」
「ひゃ⁉」
突然背中から声をかけられ咲人は悲鳴を上げた。
いつの間にか風呂を上がっていたアンが寝巻姿でリビングに現れた。
最近は状況に考えが追い付かないことばかりだ。
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