アン「いっつぁ?にゅ~でぇずぅ?」

「サキトが私をアンと呼んでくれるようになった」


 それひとつでアンの世界は変わってしまう。

 食卓の席の配置を対面から横並びに変えた。

――サキトは私を左側にしか座らせてくれない。どうして?

 アンは咲人の真似をしてを使ってみた。

――なんでコレで魚を上手に食べられるの?

 咲人がソファのアンの指定席に座っていた。たまに場所を取り合う。

――【パソコン】のある部屋に入ってみた。私もえみに手紙を書きたい。

 たまに、なんとなくでアンは咲人の名前を呼んでしまう。

 首を傾げて咲人にアンと呼ばれたら何も言えなかった。

――きっとサキトにもこうやって困るときがあるんだと、思う。

 たまに彼がアンの頭を雑に撫でるときがあるからだ。

――足りないよ! なにかわかんないけど、足りてないっ!

 

「サキトが私をアンと呼んでくれるようになった」


 それひとつで世界は変わってしまう。

 今日も新しい一日が始まる。

 一日、一日と表情を変える日々にアンは少し戸惑う。

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