間章1 天使の大聖堂
間章01【1】
「起きてください……大聖堂へ到着致しましたよ」
「グー……あっ!……学校の時間!?」
ペガサスの引く馬車に乗っていたミレイは、その中で熟睡していた。
アンダーグラウンドで天使の騎士に連れられたミレイだったが、ペガサスを使っても天界へ向かうにはかなりの時間を要し、その間疲れもあってかずっと眠りこけていたのだ。
「ふっふっ……夢でも見ておられたのかな?ここは学校ではなく大聖堂です。大天使ミカエル様のおわせられます、この天界で最も大きい聖堂でございます」
天使の騎士は微笑し、目の前にある大きな聖堂の説明をする。
「あ、そっか……あたし魔界に……あっでもその後天界に来たんだっけ」
目をこすり、ミレイは馬車を降りる。
「うわぁ!!大きいぃっ!!」
そんな寝起きのミレイの眠気を、全て飛ばしてしまうような光景が目に映り込む。
天使の大聖堂。天界一の大きさを誇るその大聖堂は、60メートル、20階建てのマンション程の高さがあり、周囲には聖堂とは思えないような塀や物見に使う砦が設置してあり、その姿は城のようにも見える。
「この大聖堂は聖堂としての役目はもちろん、もし戦争が起きた時に対応できるよう城の役目も果たしているのです。まぁ戦争など起きないことに越したことはありませんが……」
天使の騎士は軽く俯く。
その理由は、今目の前に近づいている、魔界の王ベルゼブブが企むハルマゲドンのことが頭の隅にあったからだ。
「おっとすいません!客人の方、更には神に選ばれた方にこんな顔をしてしまうとは、お許しください」
「そんな!気にしないでください。むしろあたしを連れて来てくれた騎士さんが良い人……あっ天使か!良い天使さんで良かったなって思ってます」
ミレイは騎士に向かってはにかむ。そんな彼女を見て騎士は笑みを浮かべた。
「フフ……ありがとうございます。そう言っていただけるとわたしもあなたを連れて来て良かったと思います。わたしはアークエンジェル、アークと呼んでください」
アークエンジェルはミレイに一礼する。
「あたしはミレイ、アキハバラミレイよ。よろしくねアークさん!」
アークエンジェルを見習ってミレイも一礼する。
「ではミレイ殿、これからミカエル様が大聖堂にいらっしゃるか確認に行って参りますので、しばらく大聖堂の周りを歩かれていてください。見どころと言えば、聖堂内のステンドグラスなんかがいいかもしれません」
「分かりました、じゃあちょっと探検してきます!」
アークエンジェルはそう言って、大聖堂の中へと入って行く。
彼がいなくなって、ミレイは早速大聖堂の周りを歩いてみることにした。
「本当に広い場所ねぇ~……全部回るんだったら一日かかりそう……」
大聖堂の門前には大きな庭園が広がっており、そこには様々な花が咲き乱れ、天使達がそれをせっせと手入れしている。
すると、そんな働いている天使の中に、一人だけずっと大聖堂の門の外を見つめ続けている背の小さな女の子の天使がいた。
「あの子何してるんだろう?」
ミレイはそんな天使のことが気になり、近づいて行く。小さな天使は相変わらず、呆然と門の外の風景を見つめ続けていた。
「ねぇっ!!!」
「うぎゃあっ!!な……ななななんやね……じゃない何ですかっ!?」
ミレイは天使の背後に着き、大声で呼んだため小さな天使はその場で驚き、飛び跳ねた。
「何見てるの?ずぅ~っと門の外見てるけどさ」
ミレイは小さな天使の顔の丁度真横に自分の顔を持っていき、先程まで小さな天使が見ていた風景をまじまじと見る。
門の外には天界の街が広がっており、そこでは天界に住む天使達が自由に暮らしている姿があった。
「な……何でもあら……何でもありません……何でもないですから」
小さな天使ははぐらかすように言って、その場を早々に去ろうとする。
しかしここは好奇心旺盛なミレイ。逃げようとする天使の腕をむんずと掴んだ。
「何にもないって真っ先に言うやつは大抵怪しいのよ!それにさっきから喋り方までオカシイし……あんた何か企んでるわね?」
「た……企んでるなんて滅相もあら……ございません!ってイタタタッ!!ちょ!腕が!!これ以上いけない!!かんに……勘弁してぇ~!!!」
ミレイは握っていた天使の腕を背中に持っていき、関節技をかける。
天使は泣き叫ぶように許しを請うが、ミレイは技を解くつもりはない。
「分かった!この大聖堂を狙ってるのねこのテロリスト!でええい!曲者め、大人しくせえええいっ!!」
「んなああああ!なに勘違いしとんねえええん!!」
天使は決死の思いで全身を翻し、ミレイの腕を振りほどく。
関節技をかけられた右腕はジリジリし、天使は涙目になっていた。
「ええ加減にせぇやこのぉ……!エンジェルだからってキレる時はキレるでホンマっ!!……はっ!しもうた!!」
怒りに任せて怒鳴っていると、つい隠していた自分の本来の言葉が出てしまう。
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