第6話 お米は美味しい
みなさんでわいわいと盛り上がりながら楽しい食事を続けていると、
「サッキュン」
「……? わ、私ですか……?」
「サキュバスだからサッキュン」
「吸血鬼はヴァンパイアでは……?」
「……サッキュン」
「え……?」
「サッキュン」
「は、はぁ……?」
「すみません、この子あだ名で呼ぶのが好きなんです(サキュバスって確か
「……それで、何か……?」
「血。美味?」
「血ですか……? はい。とても美味しいと思います……」
「何味?」
「味は皆さんもご存じなのではないでしょうか……? 喉に絡みついて錆び付いていくような鉄の味です」
「ドラぁ……。そんなのが美味しいドラ?」
「恐らくですが、私たち吸血鬼とでは味覚が少し違うのかも知れません……」
八美夜さんの言葉に耳を傾けつつ、彩七さんはなるほど……とこくり。
(喉がイガイガして私はちょっと微妙かなぁ)
いつだったか鼻血を出したときのことを思い出すも、あの味はちょっと好きにはなれませんでした。
「……あ、でも、あれですよ……? 別に吸血衝動みたいなものはありませんので……」
慌ててつけ加える八美夜さんに、
「あ、そうなんですか?」
彩七さんは少しだけほっとしました。ただ血を飲まれるだけならセーフでしたが、映画などでありがちな、牙でブスっと刺されてチューチュー吸われるのは痛そうでちょっと嫌なので。
「はい……。あくまでも好物の一つというだけなので……。皆さんも好物だからといって同じものを毎日食べたりしませんよね……?」
八美夜さんの説明を受け、自分だったらどうだろうとぼんやり考えます。
好物の唐揚げが毎日食卓に並んだら。
お肉大好きな烈火さんがほとんどひとりで食べてしまうイメージがパッと浮かんだので、とりあえず胸焼けはしないでしょう。
「あらあら。私は毎日お昼にお蕎麦をいただいてるわよぉ? ねぇ、彩七ちゃん」
「いつも十割蕎麦だよね」
彩七さんは知っていました。姉である
「チョコは常に完備」
春七さんに便乗し、香さんは十円で売っている小さなチョコをポケットから取り出しました。彼女はいつもチョコを持ち歩いています。たとえ夏の暑さでチョコがグチョグチョに溶けたとしても。
「え、え……?」
予期していなかった春七さんたちの言葉に、八美夜さんの頭はパンク寸前のようです。
「落ち着いてください。このふたりが珍しいだけで、八美夜さんが言っていたとおり、普通は好物だからって同じものを毎日食べたりしませんから。ですよね? ドラさん」
「ドラ? そんなことないドラ。彩七だって毎日お米を食べてるドラ」
「ああ、確かにそうかも(言われてみれば)」
思わず納得してしまいましたが、ほぼ毎日のようにお米が食卓に並んでいるのは別に好物だからという話ではなく、食文化の話なのでした。
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