第290話不均衡症候群

「お仕事をされているのですか?」

何度か透析の最後の止血をしてくれた看護婦が声をかけます。

「いえ、透析が迫った時点で通常の仕事は止めました。それて新しい透析でもできる仕事を探しているのですがまだまだです」

ここでも労働裁判の話はしていません。

「膀胱痛で何度か途中で中断していますが今日は?」

「痛み止めを貰ってから持つようになりました」

私の場合はベットの頭を起こしてもらい最後の止血作業に入ります。

頭が起こされたとたんベットのライトが回り出し音が響きます。

と同時に気分が悪く吐き気が。

「血圧が60まで落ちています」

医師がいつの間にか横に来てもう一度寝かされます。

「透析の副作用の1種ですね」

と言いながら再度血圧を測ります。

「100まで戻りました。透析を始めたとき(導入期)には、透析中や透析終了後に頭痛や吐き気(不均衡症状)が起こることがあります。これは、血液から老廃物は抜けますが、しばらくの間、脳の中では老廃物が残っていて、脳内の圧力(脳圧)が上がってしまうことにより起こります。自然に回復するので心配はありません。私達は不均衡症候群と呼んでいます。回復しない場合は、透析の効率(血液流量、ダイアライザーの大きさ、透析時間など)を落として行うようにしますが、症状が強い場合は、脳圧を下げる薬(点滴)を使用することもありますが、まあ大丈夫ですね」

今日は大事を取ってシニアNPOへ行くのを明日にずらせてもらいました。

透析後の予定はしばらく外すことにしました。

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