第216話保険金返還訴訟

不動産部長の損害賠償を担当している若い弁護士も同席しています。

「親父さんはボイラーの不正保険金受給も不動産事業部長で刑事訴訟をと言っておられますがどう思われますか?」

「彼が警察に飛び込んだことは聞いています。でも不起訴になるように思います」

「なせ?」

「それは警察が彼を信用していないのです」

「私も賛成です。それでK火災さんと話をしていたのです」

K火災の調査役と自社の弁護士が顔を見合わせて、

「当社にも問題があります。営業部ではM火災から保険移管最中で困ると言われています。この会社は大口ですから。でも調査部としては具体的に調査を始め総務部長とも話をしていますが、まったくまともな話になっていません」

「ただ今の証拠だけでは弱いのです」

K火災の弁護士が自社の調査資料と私が前もって送っていた不動産事業部の彼女が撮った写真を並べます。

私が持ってきたUSBを出してパソコンに差し込みます。

「これは懲戒解雇の時に取った最後のバックアップのUSBで背広のポケットの忘れられていました」

「これが例のM火災に出された申請の事前依頼の報告書ですね?」

「この中に申請の柱になる写真がありますね。この写真と同じ部分を撮ったものが3枚あります。当時のありのままの写真が2枚と不正を施した写真が明確に証拠となっています」

K火災の弁護士が写真を並べて指で示します。

「調査部としては訴訟を起こす予定です。あまりにも悪質ですから」

「これはこちらの裁判でも採用させてください」

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