第184話信じられない人物

腹膜透析はもう諦めています。

この調子では働くということは考えられません。

しばらく透析後を見据えた第2の人生を考え始めています。

それで今のシニアNPOの職業訓練を受けていますが、中身はシニアNPOの設立とパソコン教室です。

残念ながら今までの経験からするとはるかに低レベルです。

この教室は土日は休みで平日は4時にきっちりと終わります。

「偶然やのう」

ビルの玄関に不動産部長の大柄な体が見えました。

「偶然じゃないでしょう? 話すことはありません」

と歩き出しましたが、後ろから話しかけてきます。

「あの管理の社長を紹介してもらえんかな?」

「あなたは勝手すぎますよ。ホテルへ行った時も専務を譲る代わりにこちらには仕掛けて来ないと約束したはずです」

「あれは総務課長に本命はそちらだと社長が言っていると言われたので、盗聴テープの説明を社長にしたんだ」

「嘘八百でしたね?」

「あれは詳細を総務課長がメモしてきたのを伝えただけで中身は今も知らない」

なのに彼は嘘を社長に話し、それが労働審判の調書にもなっていました。

「そんな姿勢が怖いのです。揉める気はないですが仲介はお断りします。それと下手に動くと増々泥沼にはまりますよ。これは最後の忠告です」

確かに人は悪くないのですが、だからこそこの性格は信用できません。

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