第165話不透明な証言
翌朝、職業訓練に入る前に部長からの着信がありました。
こちらから掛け直してみると、元気のない声で部長がぼそぼそと話します。
「和解したんだってね?」
「ああ、そうそうなんです。弁護士が和解で話を進めてしまって…。Y署にまた今から呼ばれているんですが、どういう?」
「嘘発見器に掛けられるから覚悟しておくこと」
「なんでまた!?」
「どうもみんなの証言に嘘が多いと見ているようだ。私の場合はホテルの印鑑の引き渡し時期の再確認だった。当初よく思い出せなくてホテルの社長の言う時期かなと同意したが、後で調べてみたら6月5日だと分かった」
「私は親会社の言う6月末ごろと答えてしまっています」
なぜ部長は本社の言う遅い時期に同意したのか不思議だった。
「私のスケジュールの中では印鑑を届けたのは部長本人ですよ」
「そうでしたかあ」
どうも歯切れが悪い。
「今から入ります」
「後で報告貰える?」
返事がなく切れました。
6時半、部長から留守電が入っていました。
「6月5日に修正しました」
それだけで切れていました。そのままこちらからは繋がりません。
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