第128話労働審判制度
2度目の労働裁判専門の弁護士事務所です。
「送金はいただきました。私が担当させていただきます。会社の方で離職届は出ましたか?」
「何度も連絡しましたが、総務課長が退職願と引き換えと言って話にならないのです」
「社長は?」
「携帯に出てきません」
「仕方がないですね。こちらで電話してみます。離職票を出すのは会社の義務なのですから。ところで前回も言った不当解雇で争う形になります。労働審判制度という新しい制度ができています」
この制度は私が総務担当していた頃はなかった制度です。
「裁判官と労使の専門委員で構成される労働審判委員会が、紛争事件の審理(紛争における争点の確認や証拠調べ)を行い、調停(話し合いによる紛争解決)や労働審判(実情に即した解決をするために必要な審判)を行う制度です」
「今までは1年~1年半ほどかかっていたと思うのですが?」
「申立を行い、40日以内に第1回目の期日が来ておよそ第3回の期日で審判が行われますので、4か月ほどで決着ということになります。約8割がこの制度で和解となっています」
「なぜそんなに和解率が高いのですか?」
「はい。時間外労働の場合は証拠が揃えば大半が労働側が勝訴に近い和解になっています。不当解雇の場合も解雇時点から毎月の給与が加算され続けられるので分が悪くなればすぐに和解してきます」
でもこの会社は裁判を引っ張り続けるがパターンの会社です。
私がこの会社の裁判の引き継ぎを専務から始めた頃で30数件の裁判が続行されていたのです。
この決断をするためには第二の人生をかける勇気が入ります!
「まず、このマニュアルを見て申立書を書き上げてください。そこから練り上げていきます。とくに証拠の整理を始めてください」
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