第90話アルコールと腎不全
「どうですか体調は?」
いつもの言葉で内科診察が始まります。
「相談なのですが、来月から1か月かけて取引先を回ることになりましたが、今の体調で問題ないのでしょうか?」
主治医が検査結果に目を通しています。
「前回225の血糖値が145まで回復していますね。クレアチニンも4.45と落ち着いています。いかに腎不全としては5.00までで踏みとどまれるのかです。その取引先は大阪市内?」
「いえ、東北から九州に26件散らばっています」
「それは大変だ」
「運動量もありますがお酒の席が続きます」
「適度な運動はいいですが、ハードな運動となるとクレアチニンが上がります。アルコールではまずタンパク質の制限に大きく障害が出ます。腎臓にはタンパク質は大敵なのです。でも仕事ならアルコールを選んで量を制限してください。ビールと酒は控えて焼酎やウイスキーが無難です」
アルコールのたんぱく質の含有量のリストを見せてくれます。
「合わせてリンとカリウムをマークしておかなければいけませんね」
「もともとビールが好きなのです」
「これは少しだけ飲んで他の飲み物に切り替えることです。ビールは飲む量が多くなるので、リンの摂取量に気をつけます。蒸留酒(焼酎、ウイスキーなど)は製法上リンやカリウムを含有しません。またアルコールの摂取により高血糖をきたすこともあれば、逆に栄養状態が悪い人では、肝臓のグリコーゲンが減少しており、アルコール性低血糖をきたすこともあります」
「リスクが多いのですね。でもこの仕事を最後の仕事にしたいのです!」
そうでなければ人生に大きな後悔を残すことになるような気がしています。
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