第13話

 シェングはうつ伏せに、板張りから漏れる夕日の光を見つめていた。

 引き戸が開けられる。

「おい、コクケン、おい」

 いつもの男ではない声がして、くるぶしをふいに握り締められた。

 彼女はゆっくりと視線を引き戸に向ける。

「人間の目をしてるじゃないか」

 彼女は戸口から覗く浅黒い顔を見つめていた。

「おまえはもう見世物にされん。私が買い取ったんだ」

 やはり同じことの繰り返し。

 彼女は短く嘆息すると、板張りに目を移した。

「私の云ってることがわかるんだな? おまえに頼みがあるんだ。聞いてはくれんか?」

 彼女は答えなかった。

「私の名はカイヨウだ。お前の本当の名前は?」

 目を再び男のほうに向けたが、答えるすべをもたなかった。

「だが、コクケンなんていう名ではないんだろう?」

 彼女は力を込めてうなずいた。

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