#70 あすか⑤
人間による自然破壊が顕著に現れ、地球の未来は保証されないとまで言われていたが、だからこそ自然に対する見方が改められた。
この時代になっても、都市公園なるものは存在している。
「あ、もしもし、ミライさん? お久しぶりですー!」
木漏れ日の輝くベンチに座り、彼女はスマホに向かって声を弾ませた。
「忘れる訳ないじゃないですかー! キョウシュウのボスだったミライさんをー」
瞬間、彼女ははっとして口を塞ぐ。
「やばっ、今の、誰も聞いてないよね…。あっすみません、実は私、今公園にいて……。えっ? いや、大丈夫ですよー。多分誰も聞いてないし。いやぁ、パークのことをまともに話せない世の中なんて、本当に悲しいですよね」
前置きはこの辺にして、と、彼女は本題へ話を進める。
「今日お電話したのは、あの活動についてなんですけど……ミライさんは、私達の意見に賛同してくれますよね? ………あー、良かったー! なら話は早いです。突然ですが、今度パークに行かせてもらえることになりました!」
スマホのスピーカーから、歓喜の声が漏れた。
「そうなんですよー。母親が管理センターに押しかけて、土下座までして頼んだんです。…あははっ、ホントに無鉄砲ですよねー…。それで、行けるのが三人らしいんで、ミライさんをお誘いしました。……いえいえ、未だに情熱があるのはミライさんだけだなーって思って…いかがですか? …はい、分かりました! ありがとうございます!」
彼女は、独りでに蔓延の笑みを浮かべる。
「じゃあ、行きますか! キョウシュウとホートクのボスで! あ、あと、私の母親もでした。あはははっ」
目の前の広場では、少年と父親が楽しそうにキャッチボールをしていた。
「じゃあ、詳細は追って連絡しますね」
彼女は立ち上がり、父子の元へと歩み出す。
最後にこう約束し、電話を切った。
「一ヶ月後に、ジャパリパークで」
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