第26話 人形屋敷の主人


 ───なんていい趣味なのかしら。


 古びた洋館を遠ざけるように囲む歪な柵。洋館までの長い道のりには朽ちた人形が散りばめられ、どんな猛者でも近づけないホラーハウスを演出している。

 目玉が飛び出たもの、片腕が足りないもの、全身が焼けたものなど、大きさも種類も違う人形を見渡しながら洋館の玄関を叩く。

 勝手にドアが開き、中に入ると不気味で可愛い人形に囲まれたがソファに座っていた。報告書の容疑者に酷似した操り人形で遊んでいる。


「外の子をジロジロ見ないで。すごく警戒してる」

「あらごめんなさい。あまりにも可愛いものだから」

「何しにきたの?人形だれか借りる?」

「違うわよ。彼の事件の調書を書かなきゃいけないのよ」


 長谷は操り人形を指さした。は遊んでいる人形をじっと見つめる。

 操り人形は黒い涙を流して床を踊る。が手を離すと、人形は小さく悲鳴をあげた。


「話を聞かせてもらえるかしら?」



「傀儡の能力者──形代かたしろなぎさくん」

「ちょっとだけだよ。は皆の世話があるから」


 長谷が承諾すると、洋館のドアが勝手に閉まる。

 外の人形が一斉に笑い出した。

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