桜ヶ丘高校
第5話 高校潜入
トイレの花子さんや増える階段。
動く人体模型に音楽室のベートーヴェン。
どこにでもある七不思議の中で、その高校はロマンチックな七不思議があるという。
『恋結びの桜の木』
校門の隅にある木の下で告白すると99.9%の確率で両思いになれるらしい。
何でも、室町時代くらいに身分の違う男女が駆け落ちする際に待ち合わせ場所としてこの桜の木に赤い紐を結わえたとか。
その後会えたかどうかは定かではないが、今でもあるということは願い叶わずといったところか。
「好きですっ!」
顔を真っ赤にして告白する女子高生。恥ずかしそうに顔を隠して体を縮ませる。
校内でも指折りの美女と言われているそうだが、全くもって興味がない。
「ごめんなさい」
数年ぶりの黒髪を垂らして謝る隼。女子高生は泣きそうになるのを我慢して「どうしてなの」と隼に詰め寄った。
隼は詰め寄られた分距離をとり、淡々と理由を述べる。
「そもそもお前に興味無い」
「でもっ!友達からでもいいから」
「嫌だ。あの、近寄らないで……」
「女の子に対して失礼じゃないの!?」
──あぁ、こいつ……。
「ウザイ。しつこい。そういうのホント嫌いだし、ねちっこい女はもっと嫌いだ」
女性には強すぎる毒を吐いて立ち去った。しゃがんで泣きじゃくる彼女を置いて玄関に向かう。自分の下駄箱で靴を履き替えていると、いつもの辛い匂いがそこら中に漂っていた。
「転校三日目にして初の告白!校内一のイケメン隼君、気分はどうだ?」
「茶化すな。最悪の気分だよ」
「そりゃお前、女嫌いだもんな」
「そうだよ悪いか。つーか、実名で呼ぶな」
「はいはい。『
「茶化すなっての」
毛先だけ黒くした赤い髪の薫はどこに居ても自分のスタイルを貫いていた。
初日から制服を崩して着るわ、先輩後輩・教師構わず喧嘩するわの自由人。授業をサボる、校則を破る、そんなことをする為、早々に教員の中で『危険人物』のレッテルが貼られていた。
まぁ、そのお陰で助かっていることがあるわけだが。
「グラウンドは特にないな。地面が妙に柔らかいくらい。土質とかそんなんかも知んねぇけど。校内はまだ全部回りきれてねぇけど、隼はどうよ」
「所々壁が新しいな。床も綺麗なところと年季の入った所がある。二階や三階は補修だろうが、一階は分からない」
「パンフで見た校内地図とはちょっと違うんだよなぁ。後で詳しい周辺地図を調べるか」
「そうだな」
ピンポンパンポーン!
校内アナウンスの鉄琴が鳴る。低い男の声が怒りを抑えるように校内に流れた。
『二年一組、
余裕がないのか簡潔な命令口調。薫はヘラヘラと笑って職員室に向かう。
「おかしいな。悪ぃことまだバレてねぇはずなんだけどなぁ〜」
──バレたから呼び出されたのでは?
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