【 月詠み 】

   赤い月


男の背中ニ 爪ヲ立て

傷口から滴ル血で

夜の月ヲ 赤く染めル

背徳の赤い月ヲ見てはイケナイ

月の狂気が わたしヲ惑わス


『 愛は全てを奪うこと 』


熱く滾ル 生命の水ヲ

この身ニ注ぎ込ンデおくレ




   青い月


青白き月の夜

交ざり合えない『 コトバ 』は

ため息になって消えていく

封印された『 コトバ 』が

月の雫に融けていく


哀しみの月姫

玲瓏れいろうなる青き月の光よ

その冷たい横顔は

千の夜の孤独を越え

ひとり天上を目指し昇りゆく




   黒い月


自然破壊 環境汚染 

そして核戦争

望み過ぎた人類は 

自ら墓穴に墜ちた

科学の力で 

神に近づこうとする人類を

嘲り嗤うかのように 

神が罰を与えた


草木は枯れ 水は干上がり 

空気は黒い毒ガスに

青い惑星は

生き物が死に絶え 

死の星になった

人類の累々たる屍が 

未来を呪って横たわる

地から這い出たむしどもと 

貪欲な鴉が死肉に群がる


太陽は昇らない 

星々は瞬かない 

そこは常闇の世界

荒野を渡る風が 

引き裂くように啼いた

まるで地球の

断末魔の叫びのように 

人類の傲慢さに 

神は怒りの鉄槌を打った


人類の末路を

黒い月が見下ろしていた




   蒼い月


漆黒の闇の中 

蒼い月が出ましたら

魔女の化身 

黒猫は月に嗤う

今宵 愛しい男に

呪いをかけませう

あなたを誰にも渡さない 

逃さない

どんなに足掻いても 

後戻りはさせないわ

月夜の接吻は 

何故か血の味がした


星屑も消え 

蒼い月は水面に揺れる

魔女の化身 

黒猫は月に啼く

今宵 

疵つけ合うように求めあう

あなたを恋い慕う 

この熱情は狂気となり

闇を引き裂き 

無限地獄へ堕ちていく

愛の刻印 

背中に深い爪痕つめあとのこします

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