トイレ

 トイレットペーパーをトイレに向かって投げつけますがトイレは喜びません。トイレットペーパーはトイレの餌ではないからです。トイレの餌はうんちです。


「私たちが食べた餌を排泄したものが餌になるなんて世界は良くできている。本当によく出来ているんだよ。」


 エルサーム・ムッサーの名言として知られているこの言葉はあらゆるトイレの胸に刻まれており、そして人々を励ましている。人々は窮地に陥った時にこの言葉を思い出し、そして未来に希望を見出す。


 しかし、疑問を投げかけるものもいる。


「トイレというものは人間が排泄物を処理するために設計されたものだ。この言葉はまるでトイレが自然発生したかのような誤解を招く可能性がある。直ちに撤回すべきだ。」


 エルサーム・ムッサーの論敵として現れたのはジョンピエール・ターニーだ。


 この言葉にエルサーム・ムッサーはこう反論した。


「人間だって自然の一部なんだ。人間が作ったものだって自然発生したものに過ぎない。そう、私たちが食べた餌を排泄したものが餌になるなんて世界は良くできている。本当によく出来ているんだよ。」


 人々はムッサー派、ターニー派の二つに分かれ、論争を繰り返した。ムッサーの発言は屁理屈だとターニー派の人間は言った。ムッサーは朝起きてまず歯を磨くように簡単に嘘をつく。彼は悪魔のような人間なのだと口々に罵る。遂にエルサーム・ムッサーの元に殺害予告が届いた。


「お前を殺す。殺してトイレに流す。」


 手紙にはそう書かれていた。エルサーム・ムッサーは恐れた。警備の者を雇い、厳重に自宅を囲わせた。エルサーム・ムッサーは人々に呼びかけた。


「暴力は何も解決しません。人々は穏やかに、協調しあうべきなのです。このよく出来た世界のように。」


 しかしこの声明が火に油を注ぐこととなった。殺害予告がたくさん届いた。エルサーム・ムッサーはたくさん届いた殺害予告を燃やし、焼き芋を焼いた。焼き芋は美味しかった。精神的に限界を迎えていたムッサーは涙を流しながらそれを食べたといい伝えられている。


 完

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