交通事故

 そう言えば、本棚が欲しいのでした。机の上に乱雑に散らばった本たち。整理整頓のせの字もありません。本棚を買いに行くか。ああ、ちょっと離れたところにホームセンターがあるのですよ。うんうん。そうと決まれば話は早い。車をブーンと走らせるのです。


 ブーンブーン


 日曜の昼下がり、人々でごった返している街。なんだか幸福の匂いがするな。


 ブンブブーン、ブンブブーン


 ブンブブーン、ブンブブーン


 キキーッ!!


 ドガーーンッ!!


 あっ、、若い女性が目の前に倒れています。ピクリとも動きません....。ああ、大変だ!!大変だ!!赤信号を無視していた!!


 ピーポーピーポー


 救急車が来て、そして警察がやって来ました。これはもう本棚を買いに行くどころの話ではないです。


 警察は怒りました。


「この、トンマめ!!」


「うう、ごめんなさい。」


「この、ウスラトンカチめ!!」


「うう、ごめんなさい。」


「この、おっちょこちょいめ!!」


「うう、ごめんなさい。」


「この、あほー!!」


「うう、ごめんなさい。」


「この、ノコギリクワガター!!」


「ううっ。私はノコギリクワガタではない。」


「この、バカー!!」


「うう、ごめんなさい。」


「この、信号無視ー!!」


「うう、ごめんなさい。」


「この、ギラファノコギリクワガター!!」


「ううっ、私はギラファノコギリクワガタではない。」


 女の人は、死にました。


 完

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