御墓参り

 今日は御墓参りだ。お父さんの10周忌。いいお父さんだった。授業参観には毎年来てくれたし。中学生の私はそれがちょっと恥ずかしくて、来ないでなんて言っちゃった。そしてその日、お父さんは事故で死んだんだ。悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。


「ともこ、こっちよ。」


 ぼうっと歩いていたらお母さんと離れてしまっていた。早くお父さんに会いたいな。


「はあい!!」


 駆け足で追いかける。両脇には雑草が羽を伸ばしている。夏だ。


 ミーンミーンミーンミーン


 お墓の前に座る。お父さんの骨が眠っている。昔からそこにあったように風景に馴染んでいる。お父さんは死んでしまった。もういない。でもお墓の前に来ると、お父さんの前にいるような気がして、なんだか安心する。これはきっと気のせいだ。お父さんはそこにいるわけではない。お墓はきっとお父さんのためにあるのではないのだ。残された私たちが、お父さんに会ったような気になるために、ちょっとだけ依存するためにあるんだ。


「ともこ、お花を刺しておいてちょうだい。」


お母さんから声がかかる。


「わかった。」


 お父さんのお墓に、お花を飾る。綺麗に飾ってあげるんだ。


「ともこ!!」


「え、なに?」


「それはお花じゃないわ。勇者の剣、エクスカリバーよ!」


「え?」


 グサッ!!


 ゴゴゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴ


 今、伝説が始まる!!!!


 完

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