キジのせいで

 どんぶらこ どんぶらこ


 おばあさんが川で洗濯をしていると桃が流れてきました。


「じいじと食べるぞ。」


 じいじと食べようと持ち帰り、包丁を入れようとすると


 おぎゃあ


 赤ちゃんがおぎゃあ。桃から生まれたから桃太郎だぜ!!


 おじいさんとおばあさんはその子供に桃太郎と名付け大切に育てました。元気に育った桃太郎(以下略


 さあ、犬、猿、キジを従えていよいよ鬼退治に鬼ヶ島へ行きます。港に着きました。


 ざぶざぶざぶぶん


 海の波達はまるで桃太郎一行を応援しているかのように勇ましくざぶざぶん、ざぶざぶん。ざぶざぶざぶん、ざぶざぶん。


 さあ、行くぞ!!行くぞ!!


 ウキーッ!!


 ワンワン!!


 ピョッピョー!!


 桃太郎の掛け声に猿、犬、キジも答えます。さあ、いよいよだ、いよいよだ。


「ちょっと、すみません。」


 新卒社会人、というような立派なスーツを着た青年が話しかけてきました。


「あの、キジを飼っていらっしゃるのですか。鳥獣保護法によりですね、キジを飼うのには許可証がいるのですが、持っていますか?」


「ん、そんなもの持っていない。そんなことより今から私は鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだ。細かいことは忘れてくれ。」


「駄目ですよ〜。仕事なのでごめんなさい。ちょっと警察に連絡させて頂きます。」


「まあわかった。とにかくそこをどいてくれ。」


「駄目です!ここにいてください。」


「うるさい!どけと言っているんだ!鬼退治に行くんだ!」


 バキッ!!


 桃太郎はついに青年を殴ってしまいました。


「な、殴りましたね!公務執行妨害!傷害罪!」


「う、うるさい!!」


 タッタッタッタッタッタッタ


 桃太郎一行は走って船に乗りました。


「逃げたって無駄ですよ!防犯カメラがきっちりあなたを捉えています。全国指名手配です。」


 人間界に居場所を失った桃太郎は、鬼ヶ島で鬼達と仲良く暮らしましたとさ。


 めでたし、めでたし。


 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る