エビフライ

 大学の昼休み。エビフライが食べたいな。食堂のおじさんにお願いしてみる。


「すみません。エビフライください。」


「はあい、エビフライか。」


「はいい、お願いします。」


 軽く言葉を交わすとおじさんは奥の料理場へ向かった。


 ジュワジュワジュワワー、ジュワジュワワー


 なにかをあげる音がする。


「へい、お待ちい。」


 そう言いながらおじさんは皿の上にエビフライを乗せてやってきた。しかし、何かおかしい。エビフライの先端に、イカの足らしきものが十本、くっついているのだ。


「あのぅ、これはなんですか。」


 恐る恐る、聞いてみる。


「うむ、これはね、エビフライカ、エビフライカだよ。」


 なるほど、エビフライカか。きもださかっこいい。きもださかっこいい料理だな。しかしだね、私はイカアレルギーなのだよ。


「すみません。私はイカアレルギーなのですが。」


「そうでしたか、それはすみません。では、少々お待ち下さい。」


 そう言うとおじさんは再び奥に歩いて行った。


 トントントン、ギーギーギー、ゲコゲコゲコ、ドドドドド


 何だか変な音がする。何だろう何だろう。


 トントンギーギーギーギーギー


「へい!お待ちい!」


 そう言ったおじさんの手にはたくさんの丸太が繋がったやつ。


「それはなんですか?」


 尋ねてみる。


「うむ。これはね、エビフライカダ。イカダにエビフライがくっついているからね、ほらここに、だからエビフライカダだよ。エビフライカダに乗って、一緒に旅に出よう。」


 確かにイカダの左前くらいのところに、ちっちゃくエビフライが付いている。


 ドッシーーーーン!!


 エビフライカダを食堂の床にドッシーーーーン。


 戸惑う僕。


「さあ、乗ろう!!」


 おじさんは戸惑う僕を尻目に、ウキウキ、ウキウキしている。ええ、ええぇ。


「大丈夫!ぼく、エビフライカダ免許証、持ってるから。」


 誇らしげにかざされたその手には警察手帳が握られていた。すごいなあこの人、警察手帳持ってるんだ。私は感心し、エビフライカダに乗り込む。


「失礼します。」


 すすすすっ、すすすすっ


 ぼくらが乗っても、エビフライカダは動かない。なぜなら床の上に、乗っているだけだから。


「出発進行!!」


 おじさんが叫んでも、エビフライカダは動かない。なぜなら床の上に、乗っているだけだから。そんなことをしている間に、食堂には行列が。


「ちょっと待っててね。料理、作ってくるから。」


 おじさんはエビフライカダを降り、料理場へ向かった。


 ポリポリポリ


 私はエビフライを食べた。おいしいなりんご。


 完

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