誘拐犯と少年

 密室で小さな男の子がうずくまっている。手と足を縛られている。辛そうな体勢である。どうやら誘拐されたようだ。


「怖いよー怖いよー。ママ助けて。ママ助けて。」


「大丈夫、怖くないよ。大丈夫、大丈夫。」


 フードを被った男が少年に語りかける。手にはナイフ。恐らく誘拐犯だろう。


「怖いよー。怖いよー。」


「大丈夫。怖くないよ。怖くないよ。」


 にやにやしながら男が話しかける。


「違うんだ。」


 少年、反論。


「怖いんだ。怖くないんじゃなくて怖いんだよ。僕の怖さはおじさんが決めることじゃない。僕が決めるんだ。」


 キリッ、おじさんに言いました。


「そうだね。すまなかった。怖いね。」


 おじさんも納得しました。


「怖いよー。怖いよー。」


「怖いyo!!怖いyo!!」


「怖いよー。怖いよー。」


「怖いyo!!怖いyo!!」


 完

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