チャイムで街が崩壊する話

 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴る。今年度の終わりを告げるチャイム。このチャイムは特別なチャイムだ。音が大きい。あまりにも音が大きいので窓は割れ、コンクリートは崩れる。校舎は木っ端微塵になり、近隣のマンションは倒壊。民家は跡形もなくなり、町は壊滅状態に陥る。人々は自分自身を守るため、隣町へ避難する。この三日前には避難している。これはこの街の伝統である。三年に一度、この街は街を破壊する。そして、次の1ヶ月、住民総出で街を復元する。多額の税金が使われるが、その1ヶ月住民一丸となって協力することで街の絆を深めるのがこの狙いだ。100年程前、市長の提案によって始まったのだ。みんななんの疑問も持たず、このイベントのおかげでこの街の絆は保たれ、そして維持できているのだと考えていた。


 三年に一度の市長選挙が始まった。ある候補が言った


「あの祭り!街破壊祭り!あれはね、時間とお金の無駄ですよ。30兆円の税金が使われている!そのせいで医療保健も使えず、年金も出ない。みんな不幸に死んでいく。これは狂っています。伝統は変えていかなければいけない。私が当選したらあの祭りは消します!」


「たし蟹。」


 この人が市長になり、より良い街に、なりましたとさ。みんな素直でよかったねぇ〜。


 完

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