鳩に餌をやってはいけません
ポッポッポー、鳩ポッポー、ポッポッポー、鳩、ポポ
たいよー、サンサン、たいよー、サンサン
家族連れ、ルンルルーン、家族連れ、ルンルルーン
日曜日の駅前広場。地面にはタイルが敷き詰められ、幸福が溢れている。
「いいなあ、幸福が溢れているなあ。」
おじさんが鳩に餌をやりながらあたりを眺めています。
「いいなあ、いいなあ。」
鳩に餌をやりながらあたりを眺めています。あたりを眺めています。あたりを眺めています。あたりを眺めています。しかし、そのすぐ後ろには、
「鳩に餌をやってはいけません。」
という看板が。
「へい、じいちゃん、鳩に餌をやっちゃダメだぜ。」
チャラ男がおじいさんに声をかけました。近くには風呂敷が敷かれています。どうやらチャラ男、駅前広場で一人ピクニックをしていたようです。おじいさんはのっそりとチャラ男に目を向けます。
「違うよ。私はタイルに餌をあげているんだよ。ほらお食べお食べ。パラパッパー、パラパッパー。」
反省せず餌をまいています。しかし、どんなに餌をまいてもタイルは食べません。食べているのは鳩ばかり。
「でも鳩、食べてないじゃないですか。あなたは結局鳩に餌をあげてるんですよ。タイルにはあげてないんですよ。」
チャラ男が言います。
「だから私も困ってるんだ。鳩なんかいなくなればいいと思ってるんだ。鳩なんてタイルの餌を横取りするだけの生物なだからね。殺してやりたいくらいなんだよ。こんなにタイルが育ったのはね、鳩に妨害を受けながらも私が挫けず餌をまいていたからなんだ。みんな、私に感謝しなければいけないよ。」
「そうですか。ならばこれをどうぞ。」
チャラ男はじい様にピストルを渡しました。
「これで鳩を殺すことができますよ。本当に鳩が嫌いなら躊躇なく殺せるでしょう。」
「君、なんで銃なんか持ってるんだね。銃刀法違反だよ。警察に電話しますね。ピポパポプ、もしもし、駅前広場に銃を持った人がいますよ。怖いですよ。」
じい様は冷静に警察に通報しました。
「な、なんてこった。なんてこった。逃げなければ、逃げなければ。」
チャラ男は焦りました。早く逃げなければ逮捕される。そんなことを言いながらピクニックの風呂敷を畳んでいます。焦って畳んでいます。しかし、残念ながら畳み終わる前に警察が来ました。二人。中年の加齢臭がしそうなきっちり警察官と、スパゲティみたいな頭をしたスパゲティ警察官。バスケットボールをやっていそうです。
「こんにちは、警察官Aです。」
「Bダヨ。」
「銃を持っている男というのはあなたですよね。銃を持っているので。あなたを逮捕すればいいのですか?」
警察はじい様に質問しました。
「うんじゃー。まあ今銃を持ってるのは私だけどね。これは隣のチャラ男から渡されたものなんじゃ。だから私じゃなくてチャラ男を逮捕するんじゃー。」
「いいや違います。このじい様が鳩に餌をやってたのを私が注意したら怒って銃を出してきたんですよ。だからこのじい様を逮捕してください。」
チャラ男が反論しました。
うーん、困ったな。どっちの言っていることが本当なのか。
警察たちは困りました。周りの人に話を聞こうと思いましたがここは駅の広場、人は流動的、流れています。それに隅っこのおじ様やチャラ男に注目していた人もいないでしょう。
「ワタシ、ハトニキイテミルネ。ワタシ、ハトゴワカルネ。」
Bが言いました。
「ポポポッポ、ポポポッポポー、ポポポッポ、ポポポッポポー。」
ポポポポ、ポッポッポポー、ポポポッポポー
鳩が返事をしました。
「ハトタチ、コノケンジュウハ、チャラオノダトイッテルネ。チャラオヲタイホスルネ。」
「そうか。では君、逮捕するぞ。」
「おい、何言ってんだよ。こんなのインチキに決まってるだろ。ふざけんなよ。」
チャラ男が反論します。
「チガウネ。コレ、コッカシカクネ。ハトゴシャベレルシッテイウ、コッカシカクネ。」
Bは誇らしげに賞状的なものをかざして言いました。
「なんてこった。俺は逮捕されるのか。」
チャラ男は観念したようです。
「母さんに、逮捕だけはされるなって。万引きしてもいいから逮捕だけはされるなって。人を殺してもいいから、逮捕だけはされるなって、言われてたのに。もう終わり、おわりだあぁぁぁぁぁ。」
そういうとチャラ男は銃をじい様から奪い、バヒュン!!と頭を撃ちました。
バーーーーーン!!
まずその音で鳩が飛び去り、タイルは走り去りました。タタタタタッ!!
じい様は孤独になってしまいました。
しょぼーん(後日タイルたちはちゃんと帰ってきました。)
完
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