落ち武者ウォーキング

 オチオチ、オチオチ


 落ち武者が歩いている。傷だらけ、痛そう。血がだらだら流れている。私は困っている人を見たら助ける人間である。とりあえず、声をかけて見みる。


「痛そうですね、なにかお手伝いしましょうか。」


「うむ。先ほどの戦で全身傷だらけだ。もう私は長くない。いっそのこと首を切ってくれないか。」


「ええ、そんな。あなたの首を切ったら私は殺人罪に問われてしまいます。もしかしたら、もしかして、これは罠ですか。私をよく思ってない人間があなたを利用して私を犯罪者にしようとしているのですか。そうだ、そういえばおかしいじゃないですか。なんでこんな時代に落ち武者なんて歩いているんですか。先ほどの戦ってなんですか。説明して下さいよ。それに落武者といっても武士なんだから。自分の面倒は自分でとってくださいよ。なんで人に殺してもらおうと思ってるんですか。恥ずかしくないんですか。なんなんですか、ほんとに。」


「なにかお手伝いしましょうかと言われたから、ちょっと言ってみただけなのに、そんなに言わなくたっていいじゃないか。ぐすん、ぐすん。」


 そういうと落ち武者は自分で腹を切り死んでいった。私は己の無礼を恥じ、善く生きることを誓った。


 完

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