口裂け女風女の再生産

 朝だ。太陽サンサンサン。たらこちゃんは小学生だ。よって、小学校に行かなければならない。


「いってきまーす。」


 いつものように、元気よく家を飛び出す。小学校までは歩いて30分。いつもと変わらない道を進む。まず家を出て真っ直ぐ。登校中の小学生が多いので、車もゆっくり進んでいる。数分進むとT字路交差点に突き当たり、右に曲がる。


 クイッ、ドン


 きゃあっ!


 何かにぶつかった。前を見ると、マスクをつけた女が立っている。髪は長いがぼろぼろ、肌にはシミが目立つ。不意に目が合う。


「私、綺麗?」


 女が言った。


「綺麗です。」


 なにがなんだかわからなかったたらこちゃんは反射的に答えた。しかし、そう言えばこんな話、どっかで聞いたことがあるぞ。たらこちゃんは思った。マスク着けたオンナが「私綺麗?」と聞いてきて、「綺麗」と答えると、これでも〜っていいながら女がマスクをとる。マスクが外れあわらになる口は耳まで裂けており、ナイフで回答者刺して来るんじゃなかったっけ。


 やばっ!!


 たらこちゃんはやばっ!!と思いました。このままだと刺されてしまう。逃げなきゃ、逃げなきゃ。しかし、あまりの恐怖に足がすくみ動けません。


 女の手が顔に近づきマスクに手をかけました。


 いよいよだ、いよいよだ


 これでもぉっ!!


 女が声と共にマスクをとりました。マスクの下にも、マスクを着けていました。


「はい、どうぞ。」


 女はマスクを外したマスクを渡してきました。


「はい、どうも。」


 よくわかりませんでしたが、たらこちゃんはマスクを受け取りました。


「じゃあね〜」


 そういうと、マスクを着けた女はどこかへ歩いて行きました。たらこちゃんは、折角貰ったのだからと、マスクをつけました。マスク、風邪予防にもなりますからね。


 マスクをつけて、学校へ向かいます。続いて、豆腐屋の角を右に曲がりました。


 クイッ、ドンッ


 再び何かにぶつかりました。前を見ると、マスクをつけた女が立っています。小太りで、四十代あたりでしょうか。


「私、綺麗?」


 あ、さっきと同じだ。今度こそ口裂け女かも知れない。ガクガクガク、ガクガクガク


 たらこちゃんは恐怖のあまり声が出せませんでした。


「・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・これでもぉっ!!」


 返事が返ってこず困った様子でしたが、痺れを切らしたのか女は返答がないのにマスクを外しました。さっきと同じようにマスクの下にもマスクをつけていました。


「はいどうぞ。」


「はいどうも。」


 再びマスクを貰いました。たらこちゃんはマスクの上にマスクをつけました。これで、絶対風邪はひかないぞ!!


 同じようなことが何度かあり、たらこちゃんはいくつものマスクを重ねていました。


 困ったな。いくらなんでもこれは多すぎるぞ・・・・・・。


「私、綺麗?」


 気づくとたらこちゃんは曲がり角に立ち、ぶつかってきた子供に質問しているのでした。学校には遅れました。


 完










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