追想

「君、何してるの?」


「‥‥‥」


「ねぇって‥‥‥あれ? 震えてるの?」


「‥‥‥」


「何か怖いことでもあったの?」


「‥‥‥うん」


「え~なになに? お母さんに怒られたとか?」


「いや‥‥‥」


「じゃあお父さん? わたしってお父さんいないからよく分からないんだけどね」


「‥‥‥そうなんだ。僕はお母さんが居ないよ」


「へぇ~そうなんだぁ。じゃあお父さんに怒られたからじゃないんだね。んん~それじゃあ‥‥‥」


「君さ、名前は?」


「えっ? わたし? わたしはアンっていうの。アン・コレット!」


「それじゃあアン。君って将来の夢ってある? あと生きる目標とか」


「えぇ? えと、生きる目標っていうのは良く分からないけど、将来の夢はあるよ!」


「やっぱりあるんだ‥‥‥。それってどんな夢なの?」


「わたしの夢は、素敵な人のお嫁さんになること!」


「‥‥‥ふぅん」


「えっ? なにその反応! じゃあ君の夢は何なの!?」


「無い」


「えっ?」


「無いんだ。僕には夢が。それがすごく怖い‥‥‥」


「わっ!? ちょっと泣かないでよ‥‥‥」


「ごめん‥‥‥でもやっぱり怖いんだ‥‥‥」


「う~ん。君は将来の夢が無いのが怖いのね。なんでかは分かんないけど」


「‥‥‥うん」


「それじゃあさ、将来はわたしをお嫁にしてよ! うん、すてき!」


「えっ? ええっ!? 僕が!?」


「君って頭よさそうだし、わたしはいいんだけどなぁ」


「い、いやぁ‥‥‥そうじゃなくて、そんなこと突然‥‥‥」


「でも、夢が無いのは怖いんでしょー? 君は夢が欲しくて、わたしはお婿さんが欲しいんだから、これはあれよね‥‥‥あれ‥‥‥うーん」


「‥‥‥利害の一致?」


「かな? うん、りがいのいっち! ほら、やっぱり君って頭良いんじゃん。それでさ」


「な、なに?」


「君の名前はなんて言うの?」


「‥‥‥僕の名前は」

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