談笑

「しっかしよぉ? ほんとにラザレスさんが片棒担いでたって思うか?」


「いやぁ、ラザレスさんに限ってそれは無いと思うぞ俺も。あの人、糞真面目だったもんな」


 正午、北地区南端の兵舎で、昼食を取りながら二人の兵士が雑談に興じていた。


「なぁ? こういっちゃあなんだけど、ラザレスさんとクリフさんの死体抱えて帰ってきた団長のほうがよっぽど怪しいよな?」


「まぁな。火事が発生したとき、三人揃って居ないんだもんな、何かゴタゴタがあったのかもしれねぇわ。死人に口なしって言うし、もしかしたら今回の事件、団長が‥‥‥


 兵士の一人がそう言いかけて、口を止めた。背中に迫る気配を感じたからであった。


「貴方たち! 団長は他に真犯人が居ると言っていました。団長を疑うのは、それが見つからなかったときにしなさい!」


 二人の間に口を挟んだのは、臨時副団長グレンであった。被害家屋の撤去現場の指示に行っているはずだったのだが、二人が気付かぬうちに兵舎へと帰って来ていたらしい。


「へ、へ~い。すいませんっした~」


「まったくもう! 団長がそんなことする訳がありません!」


 そう言って、兵舎の外へと出て行ってしまうグレン。


「ラザレスさんも結構なもんだったけど、あの小僧もなかなか糞真面目だよなぁ」


「まぁそうだな。ちっこいせいでいまいち迫力に欠けるけど。あ~迫力といやぁランバート団長はやばかったよな」


「あぁ~! やばかったやばかった! あの人を前にしたら生きた心地がしねぇのなんのってな!」


 二人の兵士の談笑は、まだまだ続くようであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る